サウジアラビアは、有害なCO2の排出量を削減するための新たな方法を研究している。さらに、それほど遠くない将来における商業化を目指して、「CO2回収車」の開発を進めており、すでにいくつかのプロトタイプの試験も行っている。
米国では2000年代初めごろから、ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)がエネルギー法制においても重視する技術として「クリーンコール・テクノロジー」を掲げ、石炭の効率的かつ環境負荷の最も少ない形での利用を目指した。
これに関連する技術が、石炭火力発電所が大気中に排出する有害なCO2を回収して圧縮し、地中に「貯留」する二酸化炭素回収貯留(CCS)技術だ。そして、サウジアラビアは国営石油会社サウジアラムコを通じて、米国とは異なるアプローチで、このCCS技術の開発を進めている。
サウジアラビアのダーランに本社を置くアラムコは、日量1000万バレルの原油を生産するほか、大量のガソリン、石油化学製品を生産する。また、一方では新技術の研究に当たる研究者やエンジニアの数を急速に増やしている。
プロトタイプのトラックを製造
CO2回収車の開発で非常に高い成果をあげているのが、この画期的な技術革新の多くが進められているアラムコ本社の研究開発センターだ。CCS技術は大半が発電所向けに開発されているものだが、その中でアラムコが自動車に目を向けたのは、なぜだろうか。それは、運輸部門の排出量が全体の25%を占めているためだ。
アラムコが最初に製造したプロトタイプはトラックで、CO2を回収して圧縮する装置を搭載した。ガソリンスタンドで給油するときに、圧縮したCO2を取り出し、廃棄することができる仕組みになっている。さらに、エネルギー変換の過程で発生した廃熱も回収することができる。
ただし、このトラックが回収できたCO2は排出量の約10%だった。その後、装置の全体的な小型化と軽量化を進め、セダンに搭載することに成功。回収率は25%に上昇した。そして、アラムコが次に開発を目指しているのは、大型トラックだ。
国内で販売台数が多いのはセダンだが、この技術がはるかに高い収益を得ることができると見込めるのは、トラック業界だという。特に、移動中に路上で停車する時間が長くなる配送用トラックに狙いを定めている。トラックの排気ガスは後ろにいる人、あるいは後に続いて走行している車にとって、明らかに不快であり、有害だ。
米電気自動車(EV)メーカー、テスラが先ごろ発表したEVトラックとは異なり、アラムコの「CO2回収トラック」は、一般的な内燃エンジンと環境への配慮を基に開発されたものだ。アラムコは2018年末から2019年初めまでに、トラックの新たなプロトタイプを完成させることを目指している。膨大な石油収入が将来のために再投資されたとき、何を作り出すことができるのかを示す一つの例と言えるだろう。