いまの商業形態は限界か?
欧州などと比べ、日本では日曜祭日も通常営業、百貨店やショッピングセンターにいたっては全国津々浦々、夜遅くまで店を開けている。買い物する人がいるのかと思う田舎の国道沿いでも、夜9時ごろまで照明が煌々したモールが建ち並ぶ。そして、若い女性やママがこういう場所の美容業で勤務していたりする。
この日本の商業形態は美容業界では労働体系上限界にきており、破綻している。売り上げが低迷している夜中に店頭にいてもメーカーは採算とれないうえ、現場では疲労感が多く労働環境が良い状態ではない。美容室理容室も夜遅くまで働いているが、いくら好きな美容の職業でも社会全体が長時間労働になっているのは改善が必要だろう。最近では外国人労働者、とくにアジアからの美容での出稼ぎ労働も増え、伊勢丹や三越の化粧品コーナーはインバウンド対策として中国人女性が活躍するようになり、労働者の多様化が進んできた。そうなるとますます国際的労働の良し悪しを考えるように変わってきている。
子どもの薬を美容ケアに
ママの素行問題もある。子どもの医療保険が無料なので、子どもの肌荒れ診療でもらう薬の出荷量がうなぎのぼりらしい。ヒルドイドという薬は子どもの冬の乾燥肌対策で処方されるが、ネット上で「ママがスキンケアとして使うと効果がある。しかも無料」の書き込みまであり、小児科の先生も子ども用であれば断る理由もなく、どんどん処方され、ママの間では流行しているらしい。
実際はママが肌荒れ対策に使うという化粧品代替の使用が金額に換算すると年間90億円にものぼり、現在この薬の処方を保険適用外にしようという業界の動きがニュースになるほどである。おそらく一人一人は「ママの知恵」くらいのつもりで気にせず使っているのだが、気づいたら予定出費以上に出費が重なり、税金から100億円近くが本来の目的以外で流れていると考えると、改善が望まれる。
“手が黒ずんでいる”アジアの職人
続いては、美容と環境問題。環境問題というと自然と紐付けがちだが、美容でいうそれは、工場の排水問題や容器のリサイクルなどである。課題はあるものの、以前よりはるかに改善はしたが、それでも化学系の工場をということで工場用地設定は非常に難しい。行政の後押しだけでは足りず、地元地域の理解が必要だ。いくら化粧品や綺麗になるのが好きでも、近隣に化学プラントは別の話というのが人情である。
日本でも海外でも、機会があればいろんな工場の見学をしている。高校を出てアルバイトをはじめた頃からどうも現場が好きで、ものづくりの現場、工場などでも働いてきた。大人になった今も工場見学に行き、自分の目で最先端の現場を体験することがいい意味で仕事に影響している。
そんな最先端の工場でも、欧米と日本の違いは環境が見えてくる。車や船、機械などの組み立て工場を見ると分かりやすいが、欧米では道具をよく使い、手が綺麗である。機械油まみれなんて人はそう多くない。手が黒ずんでいる職人はアジアの工場らしい雰囲気とも言えるだろう。
また化粧品のような化学系工場、香料を使う工場、またはプラスチックシュリンクの現場などは、どうしても香料そのものやプラスチックが焼ける臭いが充満する。それを完全にシャットアウトするようなマスクを全員が持っているのはドイツの現場くらいで、世界では建築現場でも防護メガネ着用している職人はまだまだ少ない。臭いの中で呆然と仕事していたりするのがアジア的風景である。香料をたくさん吸って死亡する話は聞かないが、濃い臭いに弱い筆者には、この手の工場は気乗りしない。