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2017.12.02

農家の未来は「新・3K」にあり! 二極化する地方農家の現状

写真=ベジオベジコ

農業における3Kとは「キツい・汚い・危険」とされ、いまだに多くの社会人の就職選択肢には入ってこない。

農林水産省の調べによると平成28年の全国の農家平均年齢は約67歳で、毎年上昇傾向にある。先日お会いした呉市浦刈島の農家さんが住む地域では、農家平均年齢は90歳を超えると言う。私は2013年、野菜のデリバリーサービスを行うベジオベジコという会社を立ち上げたが、弊社が本社を構える宮崎県綾町の農家も多くが70歳を超えている。改めて数字を見ると、高齢化と後継者不足は危機的状況だ。

実際に新規就農しても、地元農家とうまくコミュニケーションが取れず、なかなか地域に溶け込めない若者も少なくなく、行政と若手就農者、そして実際の地域の人たちとの間にまだまだ課題がいくつもあるのが現状である。

しかし、私の周りでは特に東日本大震災以降、少しずつ地方や農業に興味のある若者が増えている。宮崎に移住していちご農家になる24歳の若者や伝統工芸を継ぐ覚悟をして藍染職人になった25歳の若者など、仕事の概念を超え、農業に「生き方」に「意義」や「やりがい」を見つけ出す仲間が増えてきている。

今後の農業は、いかに魅力的に、かつハードルを下げられるかが重要になってくる。「キツい・汚い・危険」ではなく、これからは「稼ぐ・効率化・簡略化」の新・3Kが農業の未来を切り開くキーワードになるだろう。

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IoTやAI、ロボットなどテクノロジーが進む中、農業界でも「アグリテック」という言葉も生まれ、アグリカルチャー×テクノロジーで「儲かる仕組み」を作り出す農家が増えている。今回の記事では、よく耳にする「儲かっている農家」や「稼ぐ農業」を掘り下げてみたいと思う。

「食べてもらう=買ってもらう」を理解する

農業に限らずあらゆるサービスは「顧客」がいて初めて価値が生まれる。農業の分野でも、最終目標が「収穫する」ことではなく「食べてもらう=買ってもらう」ことになっている農家は、常にニーズを引き出す工夫をし、「おいしく食べてもらう」にはどうしたらいいかを考えることができている。

例えば年に1度しか収穫できない野菜やフルーツを育てる農家は、PDCAを回すのは非常にゆっくりとしたサイクルとなってしまう。しかしその中でも「食べてもらう=買ってもらう」ことを第一に考え、しっかりとビジネスとして農業に取り組む農家は、持続的に顧客を獲得するための検証とアクションを日々繰り返している。

弊社が取引している農業法人「アグリアート」が生産している米は、作る前から売り先がすべて決まっている。そのほとんどが、関東などの高級デパートだ。そこには、「おいしいお米ならいくらでも払う!」という顧客がいる。その顧客を見据えて本当においしいお米を最高の農法で作り“付加価値”を与えることができれば、支持され続けることができる。

お米以外もこだわりの栽培方法でキュウリやピーマンを作り、自然派の宅配業に支持されている。ほかにも、食卓や飲食店のニーズに合わせて珍しい西洋野菜を作って、地元の飲食店に卸したりしている。
 
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アグリアート代表 松本氏

JAなど大手物流に販売すればある程度の収益は見込めるが、その場合、価格決定は常に市場に委ねられる。市場相場に左右され、自分の思ったように販売できない状況も少なくない。つまり、それ以外の販売ルートを開拓していくことが“儲かる”のひとつのカギとなるのだ。

こうしてPDCAを回し続けられる農家と一般的な農家との差は広がりつつあり、二極化が進んでいる。「誰が食べてくれているのか?」を常に考え、取り組める農家が、これからの農業を引っ張っていくに違いない。

文=平林聡一朗

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