長期にわたりデフレから脱却できない日本は、既得権を守ろうとする国内企業の態度や、配当金は株主に還元するものだという文化の欠如、見通しの暗い人口動態などからも、多くの外国人投資家たちから敬遠されてきた。
だが、日本企業のコーポレート・ガバナンスは徐々に改善しており、4年目を迎えた「JPX日経インデックス400」は、国内の企業に株主資本利益率(ROE)を高めようとするインセンティブを提供し、より投資家に優しい企業を目指すことを後押ししてきた。外国人投資家が嫌ってきた日本の状況に、変化は起きたのだろうか?
変化の兆しはあるのか
英紙フィナンシャル・タイムズは8月、日本企業は「ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance、企業の長期的な成長にはこれらの観点が必要との考え方)」を重視する方向に向かう姿勢を見せ始めたが、企業統治に関する状況はほとんど変わっていないとする記事を掲載した。寄稿者のニコラス・べネスは記事の中で、実質的な変化を起こそうとしているのではなく、コーポレート・ガバナンスを改善させるべきと言っているのは口先だけにすぎないとの考えを示唆している。
ただ、コーポレート・ガバナンスはまだ改善の途中だとしても、配当金は増加している。日本企業はここ5年、配当金を増やし続けており、この期間は過去最長を記録。そして、配当金の水準は10年前の2倍の水準となっている。
だが、それでも日本企業の配当金はいまだ、各国に比べて多いとは言えない。日本の大企業(東証一部)の配当利回りは平均で約1.9%(今年8月時点)。アジアと欧州の市場の平均はそれぞれ2.7%、3.1%であり、大きな差がある。
そして、依然としてひどい状況にあるのが人口動態だ。日本は先進国の中で、最も急速に高齢化が進んでいる。また、出生率の低下、少ない移民の受け入れ、世界有数の長寿国であるという事実、という組み合わせとしては歓迎できない(見方しだいではあるが)条件がそろっている。2060年には人口の40%以上が65歳以上になると見込まれており、これは今後も長期的に、政府財政への負担となり続ける。
評価は依然低いが─
一方で日本には、日本特有の強みがある。世界的に株価が値上がりする中で、日本株は比較的安い。投資顧問会社、英ネプチューンの日本市場担当者によれば、日本株は先進国と新興国のほぼ大半と比べても最も安くなっている。企業の収益は大幅に伸びており、70%以上が自社の予測を上回る業績を上げている。
技術開発の分野でも、日本は今も世界をリードしている。例えば、自動車の製造コストを大幅に引き下げたロボット工学の分野もそうだ。国内にはその他にも、注目すべき企業が多数ある。
日本は20年近くにわたって維持してきたトレーディング・レンジから、飛び出すことになるかもしれない。市場のパフォーマンスは、物語全体の一部にすぎない。見えないところではさまざまなことが起きているだろう。日本が現在の軌道を維持していくのであれば、世界各国のアセットアロケーション(資産配分)の専門家たちは今度こそ、日本はようやく新しい夜明けを迎えたと考えるようになるかもしれない。