とあるイベントで気づけば毎回会っていたという二人の出会いから、没頭するほどに夢中になれる原動力についてまで。ふたりの対談前編(後編は@月@日公開)。
とにかく「突き詰めたい!」
下農淳司(以下、下農):私は現在、ハワイのマウナケア山頂で、自然科学研究機構国立天文台ハワイ観測所が運営する光学赤外線望遠鏡「すばる」に、カメラなど新しい観測装置を取り付けるという仕事をしています。総額約100億円規模で、8か国、約20の大学や機関が共同でしているプロジェクトです。それぞれの機関でハードウエアを作り、最後はハワイで組み上げるのですが、私がメインでやっているのは電子回路とソフトウエアです。
装置は2019年に完成予定で、プロジェクトとしての観測は2020年から5年間の予定。5年かけて膨大な量のデータを取って、宇宙の三次元地図を作ります。すると宇宙が今までどうやって発展してきたのか、膨張速度が一定だったのか加速しているのかがわかるようになります。
羽田野:僕の仕事はプログラマーに属しますが、企画を含む業務支援的なこともやっています。テーマはウェブ技術で、ブラウザとサーバーサイドの両方をやっています。W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)というブラウザやサーバーについての技術を標準化する団体にも加盟しています。
僕と下農さんの共通点は「オタク度が高い」、つまり、何かを突き詰めたいという気持ちがあるところかなと思います。量をこなすよりは、ひとつを突きつめたい、追求したい。そういう性格ですよね。
下農:羽田野さんはHTML5の探求をいち早く始められたのですよね。
羽田野:はい。HTMLの技術が新しく出てきた2004年頃、日本では全く知られていなかったのですが、私は興味を持って調べたり、日本語でホームページを作ったりということを、本業の仕事とは別に没頭してやっていました。
下農:今は当たり前に使われていますが、当時は、この技術を誰が使うのか? という感じでしたよね。
羽田野:ブラウザに組み込んでもらえるのか、正直、懐疑的でした。エンジニアの世界では、興味を持って取り組んだテーマが、いつまでも花咲かないことがある。けれど、HTMLは大ヒットしたので報われました。
会社を辞めた後、フリーランスでプログラマーをしていましたが、その時々に合わせたテーマに没頭し、うまい具合に波に乗ってきました。生活がかかっているので、エンジニアとしてどんなテーマを扱うかは死活問題です。ただ、興味深いのは、仕事で「これはいける!」とがんばったものは全部失敗しているということ(笑)。反対に、仕事の合間に趣味でハマったものばかりが結果的に仕事になっているんです。
羽田野:僕らの最初の出会いは、具体的には忘れてしまいましたが、HTML5をテーマにした技術的なイベントだったと思います。そのようなエンジニア向けの大きなイベントでなぜか毎回会いましたね。
下農:もともと私はMozilla(モジラ)というブラウザのひとつに関わっていたのですが、次のトレンドはウェブだということで、そういうイベントに参加していたんです。