ビジネス

2017.09.27

WeWorkが初めて明かした「日本進出」の真意

WeWork Japanのクリス・ヒルCEO(最高経営責任者)

時代に適した働き方が、いま求められている。Forbes JAPANは岡村製作所と共同で、新たな働き方を模索するビジネス誌『WORK MILL with Forbes JAPAN』を発刊。9月27日から全国の書店・インターネットで発売する。

同誌の発売を記念し、9月25日には創刊イベント「Work Style Session 2017」が表参道IDOLで開催。「働き方」に関心のある300名以上のビジネスパーソンが一堂に会した。

同イベントにはWeWork JapanのCEO(最高経営責任者)のChris Hill(クリス・ヒル)や早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄、リクルートホールディングスiction!事務局長の二葉美智子などが登壇。「未来の働き方」をテーマに3つのセッションが行われた。

本稿では、その模様をレポートしよう。

「人生100年時代」で大切なのは、1つのことにしがみつかないこと

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『WORK MILL』 編集長 遅野井宏

最初のセッションでは、ワークスタイルの事例共有プラットフォーム「at will work」代表の藤本あゆみと『WORK MILL』 編集長の遅野井宏が登壇。「人生100年時代の働き方」をテーマに対談が行われた。

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンの著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略』によれば、2007年に生まれた日本人の半数は107年以上生きると予想されているという。そんな「人生100年時代」において、我々はどうすべきか。

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「at will work」代表 藤本あゆみ

2人が重視するのは、新しい特定の働き方に飛びつくことではなく、絶えず複数の物差しを持ち続けること。多彩な選択肢が広がっていても、私たちはその中からどれか1つを選び取る必要はない。多様な生き方を常に思い浮かべ、特定の生き方にしがみつかないようにすることは、人生100年時代のスタンダードになりそうだ。

柔軟な働き方が推進される社会では、フリーランスの価値がさらに高まる

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リクルートホールディングスiction!事務局長 二葉美智子

続けて、 リクルートホールディングスiction!事務局長の二葉美智子と一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉が、組織とフリーランスの共同が協働することによる相乗効果について意見を交わす。

GEの新規工場立ち上げを担うなど、近年ではフリーランスが企業の根幹部に携わる事例も少なくない。また、週2日からベンチャー企業にコミットできるリクルートの「サンカク」など、個人が企業をつなぐ窓口も格段に多くなっている。柔軟な働き方が推進されているこれからの時代は、こうした事例もますます多くなるはずだ。

「近年は優秀な人材の採用が難しかったり、あるいは流動性が高まった結果として優秀な社員が育休を取った社員の穴埋めをどうするか悩んだりというケースも増えてきている。そうした状況では、ZIP WORKER(短時間で専門スキルを活かして働く人材)やフリーランスの有用性はますます高まるはず」(二葉)

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一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事 平田麻莉

実際に二葉も、広報や事業推進、アプリの企画から開発まで幅広い仕事を担う「ZIP WORKER」と協働している。彼らの中には社内経験だけではなかなか身につかないスキルを持つ人材も多く、長期的な関係を持つことでさらに密な仕事が可能になってきていると語った。

なぜWeWorkは六本木、銀座、新橋に開設するのか?

最後のセッションには、世界17国51の都市に展開する世界最大のコワーキングスペース「WeWork」COO(最高責任者)であり、「WeWork Japan」のCEOを務めるクリス・ヒルが登壇。早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄がモデレーターを務め、WeWork Japanの戦略に迫った。

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早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄

先日、2018年初頭に六本木、銀座、新橋の3カ所でコワーキングスペースを開設することを発表したWeWork Japan。「東京」と言ってもさまざまな場所があるが、この3カ所を選択した理由はどこにあるのか。ヒルは次のように語る。

「六本木アークヒルズにはすでにグローバルな企業が集まっているから、そこでコラボを生み出したい。一方、GINZA SIXには多彩な企業が集まっているが、日本ではビジネスを始めるための敷居が高い。こういう場所に参入したい企業の助けになればと思っているよ。

そして最後に、ソフトバンクのお膝元である汐留でなく新橋を選んだのは、ビルが多く(従来的な)サラリーマンのイメージが強いから。そこにシェアスペースを設けることで、日本のサラリーマンにエナジーを与えたいんだ」

急速に拡大しつつも、それぞれの土地柄を理解した堅実なローカル展開を行うWeWork。フェイスブックやリンクトインなどデジタルでのコミュニケーションが氾濫する時代に反して、彼らは「場」に強くこだわっているように見える。しかし、実は彼らは自分たちのことをコワーキングスペース運営者だとは思っていないのだという。

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「僕たちはスペース運営者ではなくコミュニティプラットフォームだ。リアルの場を舞台にすることで、エモーションを取り入れた密度の高いコミュニケーションを提供したい。目的はあくまで意見やエネルギーの交換を誘発することであって、何らかのインパクトを引き起こすことではない。だけど、僕らの理想が実現すれば、日本のワークスタイルは自然と良い方向に向かうはずだよ」

実は、これまでWeWorkが参入してきた国でその効果を如実に受けたのは、スタートアップではなく大企業なのだとヒルは言う。3カ所の特性を把握した上で異質同士が交流する場を提供するWeWork Japanは、日本の働き方に多方面から影響を与えてくれそうだ。

最後に、日本に向けてメッセージを送った。

「僕らが意見をシェアできる文化や新たなワークスタイルを作るのではなく、みんなで一緒に作っていければと思っている。大事なのは常に『人間』だ。一緒に頑張ろう」

文=野口直希 写真=小田駿一

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