日本の「平均点教育」について僕が思うこと|小山 進

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ここ数年は、小学校から高校まで全国のいろいろな学校から授業や講演を依頼されることが増えてきました。最終回では、僕が学校での講演を引き受ける理由と、教育に対して考えていることをお話します。

きっかけは「昆虫好き」

実は僕は昆虫が好きで、店の中にも昆虫のオブジェをたくさん置いています。一見お菓子作りには関係がなく、お客様から「なぜ?」と聞かれることも多いのですが、今の自分があるのは昆虫好きだったから。僕にとって“昆虫好き”は「好きなことを徹底的に深く」という僕のスタンスのルーツなんです。

幼稚園の頃から、図鑑を全て覚えては実際の虫と比べていました。図鑑にはこの木には何月から何月までいて、本州のどこどこに分布って書いてあるけど、僕が採集した場所は違うよな、とかそんなことをずっとやっていたんです。

僕は天才肌ではないですが、興味を持ったことに対しては、昆虫と同じレベルまで徹底的にやりたいと思っています。その興味が今はお菓子やチョコレートに向いているだけで、他のことでも同じです。

平均点教育でなく、得意を伸ばす教育を

学校などでお菓子教室や講演をさせていただく機会をいただく度に、背景にはさまざまな理由があるとは思いますが、先生方は子どもたちを表面的なことで評価しているのではと感じます。極端な言い方をしますが、例えば5段階9科目制で、「5が1つで他はオール1の子」と「オール3の子」がいたら、僕は前者のほうが伸びるのではないかと思うんです。

確かに先生にとっては、1科目だけ成績がよく、残りは全くできない子どもを扱うのは大変だと思います。集中力はないだろうし、興味のない科目の授業は聞いていないかもしれません。それでも、得意なことを思う存分させてあげたほうがいい。
僕は幼稚園から高校、大学でもお話をさせていただくことがありますが、目を輝かせて真剣に話を聞いてくれる子は、平均点が取れている子ではなく、いわゆる問題児として扱われていることが多いです。

でも、その子達は学校の授業に興味がないわけではなく、面白くないことには興味がないだけで、面白いと感じたことにはとても素直な反応をしてくれます。彼らも、周りの大人が「面白いかどうか」をしっかり見ている。感度が良いんですね。

だから、挨拶の声一つにしても彼らが今までで出会った大人たちの中でもひと際大きな声で挨拶をすると「ん?今までの人と違うぞ」という目で見て、前のめりになって話も聞いてくれます。そういうところは成績評価には表れない部分。そこに目を向けなければ、ついつい平均点が取れている生徒のほうが優れていると錯覚を起こしてしまうんです。
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編集=筒井智子

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