ビッグデータ解析で躍進の「MapR」 IPOに向け最終準備へ 

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米カリフォルニア州に本拠を置く「MapR Technologie(マップアール・テクノロジーズ)」は、ビッグデータを処理するフレームワークApache Hadoop関連のソフトウェアを開発する企業だ。同社のマット・ミルズCEO1990年代にオラクルで重役を務めた経歴を持つ。

ミルズは2016年9月にマップアールの創業者のJohn SchroederからCEOの職務を引き継いだ。Apache Hadoopを取り扱う企業は他にもあるが、マップアールは他社より柔軟に、ペタバイトに及ぶ巨大なデータ量をスムーズに管理するツールを提供する。

同社は近い将来IPOを目指しており9月5日、既存の出資元のライトスピード・ベンチャー・パートナーズが主導する資金調達ラウンドで、5600万ドル(約61億円)を調達したとアナウンスした。評価額は非公開だが、前回よりも高額な企業価値での調達になったという。

PitchBookの資料ではマップアールの前回の資金調達時の評価額は約5億ドル(約540億円)だった。顧客にはアメリカン・エキスプレスやSAP、ユナイテッドヘルス・グループらがいる。

マップアールは、今回の調達資金を主にオーストラリアや日本、韓国等の海外諸国でのオペレーションの拡大に用いるという。同社は現状では赤字だが、2018年の中盤までには収益化を果たしたいと述べている。

同社のテクノロジーはApache Hadoopフレームワーク上に巨大なデータベースを持つ企業らに、データの運用や解析ツールを提供する。この分野ではJavaベースのHDFSと呼ばれるシステムを利用する企業が多いが、マップアールは独自のファイルシステムを提供する。

グーグルの投資部門も出資

マップアールの技術はインドのマイナンバー制度である「アドハー(Aadhaar)」プロジェクトでも採用され、約12億人の生体情報を銀行や公的サービスで利用する上で役立てられている。そこでマップアールは40ペタバイトのデータを貯蔵し、1分あたり最大500万件に及ぶ信号処理を行っている。

アドハープロジェクトは以前、別の競合企業のサービスを利用していたが、マップアールに切り替えた。ほか、顧客の4割は類似サービスのクオリティに不満を感じ、同社に乗り換えた顧客だという。

マップアールの出資元にはアルファベット傘下の投資企業CapitalGやMayfield、NEA、クアルコムベンチャーズ、Redpoint Partnersらもいる。以前から上場を計画していたが、予定よりかなり大幅に遅れている。

ビッグデータ分野ではHortonworksやClouderaらがIPOを果たしたが、さほど芳しい成果はあげられていない。マップアールは今年3月、上場準備のため投資銀行のスタッフを採用したと伝えられているが、その後目立った動きは報じられていない。

今回の資金調達はIPOに向けての最終準備なのか、とミルズに尋ねたところ彼は慎重に言葉を選んでこう回答した。「明確なスケジュールは決めていないが準備が整い次第、実行に移す。それが会社のためだと考えている」

編集=上田裕資

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