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フォーブス ジャパン 編集長




過度の金融緩和による時間稼ぎは限界に達した。継続する金融政策と過剰流動性、潜在成長率低下で迫られる構造改革、高まる地政学的リスク。これかられる新たな経済フレームワークとは


 世界経済のフレームワークは、リーマン・ショックから変わった。潜在成長率は低下し、強度の量的金融緩和が行われ、金融規制強化という政府の関与が拡大する世界―。これが、世界的債券運用会社ピムコのモハメド・エラリアン元 CEO(最高経営責任者)の主張する「ニュー・ノーマル」だ。

 問題は、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が2014年10月のG20の席上で、現在の世界経済を「ニュー・メディオーカー(新たな平凡)」と称したように、「ニュー・ノーマル」はいまや、コンセンサスになっていることである。

 米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のベン・バーナンキが、2010年に次のように述べている。
「非伝統的政策を打ち出すときは、その利益やコスト、リスクを考えなければならない。もっとも、長引けば長引くほど、得られる利益は小さくなり、コストやリスクが大きくなる」

 アメリカや欧州、中国、そして、日本。いずれも、それぞれに新しい経済成長モデルを模索している。すなわち、従来とは異なる、生産性を向上させ雇用を回復させ、潜在成長率を引き上げる「新しい成長モデル」のことだ。これには、大胆な構造改革を断行するしかないが、それは容易なことではない。しばらくは、各国は金融政策に頼らざるを得なくなるだろう。このように、現在の世界経済では、中央銀行に過度の政策的負担がかかっている。

 この状況は、価格変動の高まりをもたらし、ひいては市場に負担を強いることになる。長らく、投資銀行ゴールドマン・サックスで為替予測を行ってきたジム・オニールのいうように、為替市場が最も顕著に影響を受けるだろう。そして現在、ロシアの通貨、ルーブルの下落に見られるような極端な事象のみならず、米ドルやユーロにおいても、より政策的な色彩が強まるのはまちがいない。
「低成長下におけるニュー・メディオーカーが続けば、緊張と不確実性が生まれ、それが地政学的リスクを増大させる」(ロバート・ゼーリ ック前世界銀行総裁)
 これは、格差問題とも無関係ではないだろう。ニュー・メディオーカーはまさに、フランスの経済学者トマ・ピケティが著書『21世紀の資本』で述べた、「過度の金融政策により、資本収益率が経済成長率を上回っている状態」であり、それが富裕層に相対的に有利な状態をつくり出し、所得間格差の拡大につながっている。これこそが、地政学リスクの高まりをもたらすプロセスなのだ。

 その一方で、こうした低成長下における金融緩和策が、一般論として株式や債券価格にプラスに作用するというのが、5大賢者の一致した意見だ。もっとも、「(それが)結局はバブルをつくり出してしまう」と、著名投資家のジム・ロジャーズは警告する。
「世界は紙幣を乱発し、次に来る問題のハードルを高くしている」

 それでは、日本はどうだろうか?伝説的なストラテジストであったピーター・タスカは、「デフレ脱却」か世界的な経済の課題になったいまは、まさに「インフレ脱却」が世界的テーマになった1970年代後半の「ミラーイメージ」であると指摘する。そして、最もインフレに苦しみ、経済成長率が鈍化したイギリス経済がその後急速に経済を回復させたように、世界経済がデフレ脱却に一致団結して戦おうとするとき、「それまでデフレに苦しんできた日本経済・株式市場が最もその恩恵を 受けるだろう」と話す。私も同意見である。

 ただ、デフレを20年以上も続けた日本市場が多少の上昇で楽観的になり、アメリカで見られるようなPER(株価収益率)が上昇する、すなわちリスクプレミアムの低下する金融相場になるとの見方ではない。あくまで、ファンダメンタルズ(経済の基礎的な条件)の回復に沿った形での業績主導の回復となろう。
 タスカが語るような20年振りの大相場に入ったかどうかは、まだわからない。とはいえ、世界は、そして日本は、まちがいなく新しい経済成長のフレーズに入っていくだろう。

 もちろん、経済・投資環境にはさまざまな見方があり、5大賢者の意見が完全に一致することはない。それでも、長い経験に裏打ちされた彼らの考え方のロジックには、その結論以上に学ぶべきものが多いのではないだろうか。

高野 真(本誌編集長)

 

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