全てのスマホで顔認識が可能になる
現状ではディープラーニングのアプリケーションのほとんどは、クラウド内で稼働し、高性能なGPUを搭載した巨大なリソースに依存する。FaceTecのアプリケーションはスマホの内部のプロセッシングユニットで稼働し、アンドロイドやiPhoneなどのほとんどの端末に対応する。
FaceTecは具体的にどのようなマシンラーニングのアルゴリズムを採用しているかは明かさないが、それがニューラルネットワークの仕組みを用いていないことは確かだという。
同社はこれまで10万回以上のセッションを通じ、アルゴリズムを鍛え上げてきた。その過程で同社はマネキンと本物の人間との違いを認識させたほか、一卵性双生児の2名を用いた実験を通じ、認識精度を向上させたという。同社はまた、ロンドンにある蝋人形館の「マダム・タッソー・ミュージアム」にも出かけて、システムのトレーニングを行った。
FaceTecは既に、米国の大手銀行と組んでパスワードを用いずに銀行のアプリにログインできるソフトウェアの開発を進めている。銀行のアプリに顔認識機能を持たせる場合、追加するファイル容量は20メガバイトから30メガバイト程度で済むという。
FaceTecのCEOのKevin Alan Tussyは同社のシステムの利点を「端末メーカーが組み込んだ生体認証デバイスに頼らず運用でき、スマホのカメラのデータさえあれば顔認識が可能になることだ」と述べている。
現在のところ、銀行がスマホを用いた個人認証を行う場合、端末メーカーが開発した指紋認証機能などに頼るしかない。アップルやサムスンのハイエンド端末は生体認証機能の導入を進めており、既に一定の信頼性を確立している。
サムスンはさらに一歩進んだ虹彩認証の導入にも乗り出したが、これは残念ながらGalaxy S8の顔認識と同様に、簡単に突破されてしまうテクノロジーであることも分かっている。