「シチズンウオッチグループが持っているブランド全体を見せる店舗は初めての試みです。グローバル化する世の中で、世界各国からのお客様が日本に訪れ、また同時に趣向も多様化しています。そこに、シチズンというブランドだけではなく、ブランドの選択肢を提示することで対応したい。また、注目度の高いGINZA SIXへの出店により、時計業界における存在感をアピールすることも狙いの一つです」
このストアの特徴は、横長の広い店舗空間。特に日本最大級の品揃えとなるシチズンコーナーでは、気軽に試着ができるタッチ&トライのコーナーを充実させ、ただ時計を眺めるだけでない体験型のストアとなっている。
「私たちはお店を経営することにかけては素人ですから、なによりも“時計の面白さ”を伝えることを重視しました。見て、触れて、誰でも時計に触ってもらい実体験を重ねてもらえるお店を目指しています」
「流通の仕組みが変わっていくなか、GINZA SIXがさまざまな付加価値を持った複合施設として誕生しました。銀座は国際的な街であり、トレンドの発信地。GINZA SIXにも世界中から多くの人々が訪れるわけですが、“シチズン フラッグシップストア東京”では、時計業界にいるものとして時計の面白さを伝えることにしっかり取り組みながら、弊社のブランド価値を発信していきたいと考えています」
約300平方メートルの広々をした店内には時計修理工房も併設。一部時計についてはケースを研磨し美しく蘇らせるサービスも。
このストアでは「CITIZEN(シチズン)」のほか「Alpina(アルピナ)」「BULOVA(ブローバ)」「CAMPANOLA( カンパノラ)」「FrederiqueConstant(フレデリック・コンスタント)」を揃え、高級時計ブランドの「Arnold&Son(アーノルド&サン)」のみ、独立したブティックとして併設。
「弊社ではマルチブランド戦略として、シチズンブランドだけでなく幅広いブランドを取り扱っています。ものづくりにこだわり、高い技術力を特徴とするCITIZEN、142年の歴史をもつアメリカ発のBULOVA、多くの方々の手が届くスイス製時計Frederique Constantなど、さまざまな特徴を持つブランドでお客様の多様性に対応したい。そして今後は、これらのブランドにシナジーを出しながら、市場において存在感を高める。数年がかりになりますが、そこに今取り組んでいます」
最後に、昨年10月に従来のホールディングス体制から事業持株会社に移行した手応えを聞いた。
「2007年にホールディングス体制をとり、デバイス事業は成長しましたが、時計に投資が回りませんでした。その一方でスイスの時計産業は伸びていったという側面がありました。12年に私が社長になってからはあらためて時計を成長の核にすると位置づけ、これを社内、社外に向けてもあらためて進めたのが事業持株会社移行の背景でした。従来のホールディングス体制を上回る、構造のスピード化を実現するなかで、『エコ・ドライブ ワン』というムーブメントの厚さ1mmを切る世界最薄の時計も誕生しました。今後も、美しく機能性の高い時計づくりを通じ、業界の活性化にも努めていきたいと思います」
戸倉敏夫◎1973年早稲田大学卒業後、シチズン商事(現シチズン時計)入社。海外駐在を経て2012年に代表取締役社長就任。