その答えは、「どちらとも言えない」だ。確かに英国内で販売されているトブラローネは、小さくなっている。同国紙ガーディアンによると、トブラローネはいくつか並んでいた三角の一部をなくして間にスペースを作り、使用するチョコレートの量を減らしている。
だが、その原因がブレグジットのせいかといえば、そういうわけではない。英国ではこの商品のほか、練り歯磨き、トイレットペーパー、チョコレートクッキーなど、何千もの商品(正確には2525品目)が、過去5年の間に価格は据え置かれる一方で「縮小」している。
ブレグジットを決定した国民投票から5か月ほどが過ぎたころから、国内ではこうした商品の変化を引き起こした「犯人」がブレグジットだとの見方が広まっていた。そのきっかけとなったのが、トブラローネ・ブランドを保有する米モンデリーズ・インターナショナルによる、商品のサイズを20%縮小するとの発表だった。
ソーシャルメディアでも大きな話題になってきたことから、「火消し」を目指した英国立統計局は7月24日、ブレグジットは無関係であることを示す調査結果を発表した。
直接の原因は「シュリンクフレーション」
英国民は、「シュリンクフレーション(shrinkflation)」に直面している(「shrink」は縮む、の意味で「flation」はインフレーションの語の一部)。つまり、消費者は少ない量の商品に、これまでと同じ金額を支払っている。そして、この現象は5年ほど前から続いている。
同局によると、2012年1月~2017年6月までの間、英国の消費者物価指数はほとんど変化していない。だが、調査対象の商品カテゴリーのうち、「砂糖、ジャム、シロップ、チョコレート、菓子」だけは大幅に変動していた。
また、ブレグジットの決定以降、英国の通貨ポンドが下落したこともあり、食品会社は輸入コストの増加分を何らかの方法で相殺する努力をしている。商品を小型化することは、その方法の一つだ。
トブラローネの他にも、米チョコレートブランド、マースは袋入りの「モルティーザーズ」の内容量を15%削減。米フリトレーの「ドリトス」は1袋当たりを200gから180gに減らした。ケロッグの「ココポップス」は、1箱当たりの量が80g減った。
食品メーカーの立場からいえば、値上げよりも内容量の削減の方が実施は容易だ。英コンサルティング会社サイモン・クチャー&パートナースの価格戦略の専門家はガーディアン紙に対し、「実際のところ、シュリンクフレーションは戦術として成功している。消費者の多くは内容量よりも価格の変動に敏感だからだ」と説明。さらに、こうした変更は今後もその他の商品で行われていくと警告している。
「企業犯罪」との声も
一方、同国紙インディペンデントの創設メンバーである元金融ジャーナリストのアンドレアス・ウィッタム・スミスは、24日付けの同紙への寄稿で、シュリンクフレーションは「完全な企業犯罪」だと非難している。
ウィッタム・スミスは、お気に入りのジャムが値上がりしたら気が付くはずだと述べ、内容量が減らされても値段が同じであれば、ラベルの小さな文字を読まない限り、気付かない可能性が高いと指摘。「これは詐欺ではないか」と主張している。「つまり、皆がだまされてきたのだ」という。