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2017.07.17 15:00

ドナルド・ブランドを担う、世界各国の不動産王たち

フセイン・サジワニ(左)、ジュー・キム・ティア(中央上)、アビシェク・ロドハ(中央下)、ロビー・アントニオ(右)

あの派手な高層ビルやゴルフ場を世界中に展開すべく、トランプは各国で不動産業界の大物たちと提携してきた。トランプ家の子供たちと絆を結んだ御曹司から、砂漠にビバリーヒルズを築く男まで、一挙に紹介しよう。


最新トランプ・タワーを生んだドナルド・ジュニアとの友情
ジュー・キム・ティア/マレーシア

カナダのバンクーバー中心部で2月28日、トランプの名を冠した最新のビルがオープンを迎えた。

雪が降る中、すぐ近くの歩道には約200人が集まり、シュプレヒコールを上げていた。この物件をめぐる交渉が行われていた2012年、こうした抗議運動が起きるとは誰も予想していなかった。

投資額が2億7500万ドル(約310億円)におよぶこのプロジェクトを手がけたのは、マレーシアの大物実業家の息子、ジュー・キム・ティア(37)だ。すでに、住居217戸のうち214戸が合計3億4000万ドルで売約済みだという。

市内で2番目に高い69階建て高層ビルのオープニングとなれば、本来なら列をなしてやって来るはずの地元の政治家や役人が、今回は一斉にボイコット。ある市議会議員は、このトランプ・タワーを「人種差別のかがり火」と揶揄した。

また、グレガー・ロバートソン市長はこう述べている。「トランプの名前とブランドは、彼の無知な思想が現代の世界にふさわしくないのと同様、バンクーバーの街並みにふさわしくない」。
 
しかも、ティア本人が、「トランプ・オーガニゼーションとの契約に手足を縛られている」と発言したこともある。ただ、ティアにとって、トランプは1年半を費やしてようやく見つけた最適なパートナーだった。最終的な決め手となったのは、長男のドナルド・トランプ・ジュニアと築いた友情だったという。

「彼の父親は、大きな支配力を持つ成功者であり、その点で自分の父親と同じです」とティアは語る。

「幼い頃から、そういった期待や責任を背負うことがどのような気持ちか、自分にはよくわかります。だから互いに共感できたのです」

ドバイの高級不動産の仕掛け人 税政策次第でアメリカ進出も?
フセイン・サジワニ/アラブ首長国連邦

トランプ大統領は1月末、イスラム教7カ国の人々を対象とした入国禁止令を発表した。それについて、イスラム教を国教とするアラブ首長国連邦(UAE)でトランプと提携しているフセイン・サジワニは、どう対応するのか─。

売上高が19億ドルのダマック・プロパティーズを率いるサジワニによると、何一つ方針を変えるつもりはないという。それどころか、トランプ・ブランドにさらなる投資を計画しているのだ。

2000年代初めにサジワニが手がけた最初の不動産プロジェクトは、38階建ての高層マンションで、6週間以内に完売した。その後、フェンディやヴェルサーチと提携した住宅を次々と展開。マンション購入者にランボルギーニを1台無料で提供するといった派手なPR作戦で知られるようになった。

そして11年、ドバイ郊外に約4平方キロメートルの高級住宅地「ダマック・ヒルズ」を築く計画に着手した。「中東のビバリーヒルズ」と自ら呼ぶそのエリア内に設けられたのが、トランプ・ブランドのゴルフ場と別荘だ。

トランプといえば、富と権力、そして豪勢さ。そういったブランドとサジワニは手を結びたいのだ。

「ゴルフをたしなむ人々はわかっています。最高のゴルフ場を提供するのは、トランプなのです」と彼は話す。そして、2年後には2つ目のトランプ・ブランドのゴルフ場がオープンする予定で、設計はタイガー・ウッズが手がけるという。

サジワニは、今後はアメリカに進出したいと話す。ただ、15年に2件のプロジェクトを検討しつつも見送った過去がある。理由は、市場が過剰買い状態だったことと、アメリカの高い税金だ。

「新政権が税金を引き下げるという約束を果たすなら、後押しになりますね」
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text by Brian Solomon, Dan Alexander, Abram Brown, Naazneen Karmali

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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