シェリル・サンドバーグが泣いた「強く輝け」というCM動画

Photo by Antoine Antoniol / gettyimages

2015年、シェリル・サンドバーグと彼女の設立したNPO法人のLeanIn.Orgはフランスのカンヌで毎年開催される広告業界の祭典、カンヌライオンズの場で「Glass Lion賞」の設立を宣言した。サンドバーグはこの賞を通じ、広告業界がステレオタイプなジェンダー意識から抜け出し、先進的な広告が世に広まることを支援しようとしている。

それから2年が経過した今年6月、フォーブスはカンヌを訪れたサンドバーグにインタビューを行った。

──「Glass Lion賞」を設立した、きっかけを教えてください。

私は常々、企業のリーダーの中にもっと女性が必要だと考えていました。マーケティングの仕事をする上で、フェイスブックにおいても広告は非常に重要です。人々は毎日膨大な広告に触れていますが、男性が社会のリーダーであり、女性はそれに付随する存在であるような考え方を打ち出す広告は変えていかなければなりません。広告を通じてその意識を変えたいと関係者に提案したところ、彼らは即座にイエスの返事をくれました。

大手広告企業のBadger&Wintersのマドンナ・バッジャーも私の考えに賛同してくれて、「女性を貶めるような広告が賞をとる事があってはならない」とまで言ってくれました。

2013年に私が「リーン・イン」を出版した後にヘアケアブランドのパンテーンは“Shine Strong(強く輝け)”というメッセージを込めた広告を展開しました。私はそのCMを見て泣きました。なぜなら、それこそが私が著書で伝えたかった事だから。あの広告は私の本の読者よりもずっと多くの人々に見られたはずです。

──どのような広告が「Glass Lion賞」にふさわしいと思いましたか?

ステレオタイプなジェンダーの概念に、真っ向から対立するような広告作品に賞を与えたいと思いました。これまでマッキャン・ワールドが製作した「Fearless Girl」というオブジェや、P&Gの「Share the Load」という動画がこの賞を受賞しています。

今年は200以上の応募作品が集まり、その中にはアウディが男性を単純に「女性を早く目的地に送り届ける存在」として描くのではなく、一人の父親として描いたものもありました。

──ビジネス面ではどのような効果が期待できると思いますか?

フェイスブックがBadger&Wintersと共同で600万件の広告を対象に実施した調査によると、性の平等性を打ち出した広告は通常の広告に比べ、8-10%もブランドの好感度を向上させる効果があることが判明しています。ジェンダーフリーというメッセージには高い広告価値があるのです。

マイクロソフトの“Make What’s Next”という広告キャンペーンは、ブランドの好感度を19%も向上させました。これは、ジェンダーフリーを打ち出す事が単にクールな事であるだけでなく、ビジネス面で有利な結果をもたらす事を示しています。

──「Glass Lion賞」の当初の目的はジェンダーの問題に意識的に向き合うことだったと思います。その対極にあるのが、無意識な性差別だと思いますが、その例をあげて頂けますか?

性に対するステレオタイプな考え方は今も消え去ってはいません。例えば、男の子には「男は泣いたりするもんじゃない」と教えること。女の子にはボッシー(bossy:ボス的な振る舞い)になるなと教えること。ボッシーという言葉は女の子だけに使われる言葉で、男の子をボッシーと形容したりはしませんから。

編集=上田裕資

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