今回の調達ラウンドはプライベート・エクイティ企業のTPGがリードした。Viceには2014年にA+E Networksが10%の株式と引き換えに2億5000万ドルを出資していたが、当時と比較すると同社の株の価値は128%上昇したことになる。
フォーブスは現在47歳のスミスは約20%のVice株を所有すると推測する。Viceは非公開企業であるため、フォーブスのビリオネアリストの算出方法では持ち株の資産額は10%低く算定される。さらに、ロサンゼルスとマンハッタンに所有する不動産の評価額を加味した結果、スミスの資産額は10億ドルと算定された。
2014年のフォーブスの取材にスミスは「金には関心が無い」と応えていた。当時の彼の資産額は4億ドルだった。
Viceの設立は1994年。ミレニアル世代にフォーカスした出版社として始動した同社はデジタルメディアや動画に進出し、ニュースや音楽、フード分野で若者たちを魅了した。しかし、2007年時点の売上はわずか2800万ドルだった。
その後、2014年にケーブルチャンネルのVicelandをA+E Networksとのジョイントベンチャーとして立ち上げたが、同チャンネルの視聴者数は直近で平均6万人と苦戦中だ。
企業価値57億ドルは「過大評価」との声も
しかし、2015年の売上が約5億ドルと伝えられるViceの評価額(57億ドル)は、アマゾンのジェフ・ベゾスが2013年、ワシントン・ポスト買収に投じた2億5000万ドルの22倍にも達している。また、同じく巨大メディア企業であるタイムの時価総額14億ドルも、はるかに凌いでいる。
調査企業eMarketerのアナリストPaul Vernaは「Viceは過大に評価されているのかもしれない。ただし、ワシントン・ポストやタイムを比較対象とするのは誤りだ。Viceはエンタメ企業として、もっと大きなポテンシャルを秘めている」と述べた。