リクルートを筆頭に、マッキンゼー、ゴールドマン・サックス、アクセンチュア……。世間的にはエリートと呼ばれるコンサルや外資系金融から、肩書と高給を早々と捨てて、地方で挑戦する若者は多い。
岐阜県飛騨市で外国人旅行者に「飛騨里山サイクリング」などを手掛ける「美ら地球」代表の山田拓は、プライスウォーターハウスクーパースの出身であり、香川県の小豆島で「四国食べる通信」を発行する「459」の眞鍋邦大は、リーマン・ブラザーズ証券の出身だ。これらの動きは時代の移り変わりを象徴するものとして、「逆・木綿のハンカチーフ現象」とも言われている。
「恋人よ、ぼくは旅立つ〜」の歌詞で始まる太田裕美の「木綿のハンカチーフ」は、1970年代を代表する大ヒット曲だ。東へと向かう列車に乗って旅立つ別れを歌い、当時、人生の旅立ちといえば、行く先は大都会であった。その「世代サイクル」が循環し始めたと、ビジネスプロデューサーの内田研一は言う。
「70年代に東京にやってきた世代の子どもたち、つまり団塊ジュニアはある程度、肌感覚で地方を知っている。しかも、都会でキャリアを積んでいるため、親の世代よりバージョンアップしている。地方の土壌にある程度、根があるので、花が咲きやすい」
親は上り列車に乗ったが、子どもたちは下り列車に乗りこもうとする。それがいま日本で起きている世代循環にともなう現象である。
なぜSFC出身者が多いのか
鎌倉活性化プロジェクト「カマコン」で知られるカヤックの柳澤大輔社長が慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)総合政策学部出身だったことにも注目したい。地方に向かうSFC出身者は珍しくない。飯盛義徳SFC 研究所所長は、「社会課題を解決したいという学生は多くなったと実感しています」と言う。
社会起業家として地方に移ったり、大学で地域研究をするうちに、気に入った自治体に就職したりする学生もいるという。その背景について、飯盛はこう説明する。
「SFCは90年の開設以来、問題発見と解決を中核に据え、研究・教育・入試・支援制度などを展開しています。インキュベーション・マネジャーが常駐する起業家育成施設を設置するなど、支援する生態系が整っていることが大きいと思います」