現在、全米各地の警察署で警官のボディカメラ着用がどのような効果を生むかのRCTテスト(無作為化比較対照試験)が行われている。これは警官がカメラを着用するタイミングをランダムに決めて実験する方法で、時間帯や地域、個人等の属性を統計結果から取り除くことが期待される。
この実験でボディカメラの着用により、一般市民からの苦情が減ることが分かった。一方で、ボディカメラを着用により、警察の力の行使が減る地域もあれば増える地域もあることが分かった。
ボディカメラの着用で力の行使が増えたというよりも、その報告例が増えたと考えるべきかもしれない。また、カメラの着用が力の行使を助長している場合もある。警官は録画されることを意識した場合、なるべく力の行使を避けようとするかもしれないが、一方で動画があることにより、自分の行動の正統性が主張できると考えた場合には積極的に力の行使を行うかもしれない。
警官による力の行使が増えたケースには、カメラのオン・オフを警官が自由に決められる場合が多い。緊迫した状況の中でカメラをオンにすると、そのこと自体が暴力を引き起こす可能性もある(この場合は常にオンにしている方が力の行使を抑制できるかもしれない)。また、地域や警官の個人的属性によっては、録画されることをそもそも気にしていないケースもあり得る。
現状ではRCTテストの結果は様々だ。一つはっきりしているのは今後さらに分析を進める必要があるということだ。新たなデバイスの導入が、狙い通りの働きをしてくれないケースは多い。結果を正確に分析し、それを改善に役立てることが必要だ。
ボディカメラのRCTテストは、ワシントンDCを含む全米各地で行われている。より広範囲なデータが収集され、警察官を巡る状況が改善されることを期待したい。