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2017.05.27

誰もが誤解している「MP3は死んだ」報道の真相

sergey causelove / shutterstock.com

最近「MP3は死んだ」という記事が散見されるが、そのほとんどが間違っている。MP3というフォーマットは人々の生活に根づいており、そう簡単になくなるはずがないのだ。

MP3はAIFFやWAVなどサイズの大きい音声ファイルを圧縮するための技術だ。車のタイヤは空気を抜くと小さくなり形状は変わるが、タイヤであることに変わりない。それと同じことがMP3への圧縮でも起きている。MP3のコーデックはマスターファイルを圧縮するため、無くても問題ないと判断した音声を切り捨てるのだ。

ではなぜMP3が死んだと嘆いている人がいるのか。それはMP3の特許が期限切れになることに伴い、MP3を作り出したフラウンホーファーIISと特許管理人のテクニカラーがライセンスプログラムを終了するとしたからだ。現在、人気が出てきているフォーマットは同じくフラウンホーファーIISが関わったAACフォーマットで、MP3よりも効率よく圧縮して音質の劣化も少ない。

iTunesストアは発足当初からAACを採用しており、今ではストリーミングサービスのアップルミュージックやDeezer、アマゾンミュージック、iHeartRadio、ユーチューブなども取り入れている。ライセンスを購入する必要があったのはプレーヤーを作っているメーカーであり、今となってはプレーヤーで音楽を聴くことも少なくなっているため、ライセンスプログラムが終了してもさほどの問題は起きないはずだ。

人々の日常に溶け込んだMP3

MP3が他のフォーマットよりも普及した理由はライセンスの管理が緩やかだったことも挙げられる。長きにわたり愛されてきたMP3には“老い”も感じられる。しかし、だからと言ってMP3が死んだとは言えない。ポッドキャストでも、再生できるデバイスの幅広さや取り扱いの容易さからほとんどの場合MP3が用いられている。

多くの人が毎日聴いている音楽の中に必ずMP3が含まれている。レーベルがラジオ局に楽曲を届ける場合もMP3が使われる。パンドラやインターネットラジオのSlacker、Google PlayミュージックやサウンドクラウドもMP3を採用している。MP3はオーディオフォーマットとして定着しているため、AACへの移行が完了するのは遠い未来のことだろう。

編集=上田裕資

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