ハイアールは1984年の創業以来、ブランド構築(84〜91年)、多角化(91〜98年)、国際化(98〜2005年)、グローバル化(06年〜現在)と確実に成長してきた。
同社について研究してきたIESEビジネススクールの李逸庭教授は「(ハイアールは)7年ごと会社の構造を変えてきた」と指摘する。今回、李教授にハイアールのマネジメントや戦略について訊いた。
─数ある中国企業の中、ハイアールが急成長を遂げた要因は何でしょうか。
ハイアールは典型的な中国企業とはだいぶ異なります。これは張瑞敏(チャン・ルエミン)会長兼CEOによるところが大きいでしょう。彼はよく、「ハイアールの社員は全員がCEOであるべき」というようなことを話しています。
つまり、社員それぞれに「説明責任」を求めているのです。一人ひとりが個人事業主のように働けば、周りの社員との協働が不可欠となります。そのように、社員から競争意識と協調性を引き出しているのです。
─競争と協調を両立させている、と。
主に、3つの特徴があります。まずは、「社員間の協調性を引き出す組織構造」です。もちろん、各自のパフォーマンスは大事ですが、他の社員と協力して付加価値を生み出すことを求められ、それが評価される仕組みになっています。次に、「協調性に対する説明責任」です。一方的に助けを得るだけでなく、どれだけ同僚の仕事に貢献できたかも評価の対象となります。
そして、「共同体意識」です。張CEOの企業文化の築き方や経営ビジョンへの信頼もあって、社員の多くがハイアールの社員であることに誇りを持っています。「自分の個人的な利益だけではなく、他の社員のためにも働く」仕組みもあって、自然と協力的な企業文化が醸成されているのではないでしょうか。
─張CEOの影響が大きいようですね。
彼は大変な読書家で、常に学び続けています。これが社員にも刺激になっているようです。CEOに「この本を読んだか?」と聞かれた場合に答えられなくては困りますからね。その結果、会社全体が学習意欲の高い組織になります。だから、彼らは常に、それも劇的に変化し続けられるのです。ハイアールはだいたい7年おきに会社の構造を変えて、企業として成長しています。
例えば、同社は08年までは一般的な社員、管理職、経営陣からなる伝統的な正三角形型ピラミッドの組織構造でしたが、「顧客の声が経営陣にまで届かない」ことから、「ZZJYT」と呼ばれる逆三角形の自己管理型組織構造に変えています。「研究開発」「製造」「マーケティング」の3部門を「ZZJYT」という一つの組織にまとめることで、顧客のニーズを汲み取って独自の判断で動ける小規模のユニットを次々と生み出したのです。