ユナイテッド航空は、シカゴに1泊し翌日午後3時の便に搭乗する乗客を募るため、謝礼の額を400ドル、800ドル、最終的には1000ドルへと引き上げたが、必要数の志願者が出なかった。
ユナイテッド航空は降機させる4人の乗客を選んだが、69歳の医師の男性1人が拒否。男性は同航空が呼んだ保安担当者によって飛行機から引きずり降ろされ、その様子を撮影した動画がソーシャルメディアに投稿されて大論争に発展した。
ユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEOは当初の声明で「乗客の方々を他の便に振り替えなければならなかったこと」を謝罪したが、「振り替え」ではなく、実際の状況をより正確に表現した「降機させる」といった表現を使うべきだったろう。
その後ムニョスは、従業員に宛てた電子メールで、次のように述べて従業員側の対応を擁護した。「当社の従業員は、こうした状況に対処するために決められた手順に従った。この状況が起きたことは非常に遺憾だが、一方で私は断固として従業員の皆さんを擁護する。そして正しいフライト業務を行うよう継続して取り組む皆さんを評価したい」
規定を順守した従業員を擁護することは、正しい対応にも思えるだろう。
しかし規定順守の称賛は、「言われたことをする」風土の助長につながる。ユナイテッド航空がより賢明な組織で、従業員の判断力がもっと高かったならば、より機転がきいて効果的な対応ができただろう。
望ましい対応とは?
ユナイテッド航空がもう少し柔軟な対応をしていれば、丸1日無駄にすることなく乗務員をルイビルに送れたはずだ。近隣のシンシナティ行きのユナイテッド航空便はその後にもあったし、アメリカン航空でもその後ルイビル行きの便があった。
いずれの便も満席だった場合は、車で行けたはずだ。シカゴからは車で5時間の距離なので、到着時刻は遅延した問題の便と大して変わらなかっただろう。
ムニョスCEOはこう言うべきだった。「当社では従業員の規定順守を支持するが、それでも今回の件における私たちの手順は間違っており、こうした深刻な事案を踏まえて見直す必要がある。それについての責任は私にある」
会社の規則のうち、どれが順守すべきもので、どれが単なる指針として解釈するものかを、従業員が気まぐれによって決めるのはまずいが、座席をすでに確保している乗客に対して飛行機を降りるよう説得するのは、水上への不時着後に乗客を避難させることとは違う。
リーダーが取り組むべき課題は、規定順守よりも自ら考えることを優先し、その違いを理解する従業員を養成することだ。