スウィフトは数年前、アルバム「1989」をスポティファイから取り下げ、ワシントン・ポストの紙面で意見を表明した。「私の考えでは音楽は無料であるべきではない。アーティストやレーベルらはいつか、アルバムの対価を自分で決められるようになるはずだ」とスウィフトは述べ、「私はアーティストたちが自分や作品を安売りしないことを望んでいる」と付け加えた。
当時、スウィフトの決断はにわかには信じがたいことだった。しかし、スウィフトはそれをやってのけ、スポティファイの力を借りずともアルバムを売上ナンバーワンに送り込んだ。
関係者の見方は様々だった。古い音楽ファンからは賞賛の声があがったが、ストリーミングの支持者らはスウィフトを批判した。それから、2年以上が過ぎた今でも、彼女の楽曲のほとんどはスポティファイでは再生不能になっている。
しかし、スポティファイがUGMとの新たな取り決めで「今後はアーティストやレーベル側の希望があれば、発売から2週間未満のアルバムを有料会員限定の配信にできる」としたことで、状況に変化が訪れるかもしれない。
スポティファイはこれまで、「どんな楽曲でも無料・有料の会員の全てが楽しめるサービス」を目指してきた。しかし、IPOを目指すスポティファイはその準備として、今後のロイヤリティ支払額の増額に備え、大手レーベルに譲歩した形だ。
かつてカントリーシンガーとしてデビューしたスウィフトはUGM傘下のBig Machine Recordsと契約を結んでいる。スポティファイとUGMとの新たな契約は、スウィフトの新作アルバムにも適用可能になる。
2017年中に発売期待の新作アルバム
スウィフトは現在、新作のフルアルバムの製作にとりかかっていると噂され、2017年中のリリースが期待されている。今回の動きでスウィフトの新作がスポティファイの有料会員向けに配信される可能性は十分ある。さらに言えば「有料会員限定」というのはスウィフトがまさに望んでいた形態なのだ。
ただし、「2週間限定で有料会員に配信」という取り決めに、彼女が満足しない可能性もある。また、有料会員限定の対象は「新作アルバムのみ」という規定がそもそもスウィフトの意に沿わないかもしれない。
しかし、仮にスウィフトがスポティファイへの復活を決断したとしたら、これは非常に喜ばしいことだ。今回のスポティファイとUGMの契約は、彼女のプライドを傷つけずに、ストリーミングへの復活を促すことになるのかもしれない。それはまさに、多くのファンたちが待ち望んでいたことだ。