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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

illustration by ichiraku / Ryota Okamura

このたび、イギリスの医学誌「BMJ」に、本コラムの浦島充佳氏による論文が掲載された。ビタミンDがインフルエンザなどの予防になる。画期的な国際共同研究による朗報だ。


2014年、私はロンドン大学附属病院のアレクサンドラ王妃像の前に立っていた。台座には、1908年王妃がフィンセンの光療法を病院に導入し、多くの結核患者に対応したと記してあり、院内で患者をみまう様子がレリーフに描かれている。コッホがやっと結核が感染症であることを突き止めた時代で、もちろん抗生剤は無く、陽にあたることが結核の唯一の治療法であった。

このレリーフには既視感があった。皇族が病院で患者さんに声をかけられている様子を描いた明治中期の絵画「東慕慈恵医院行啓」に似ていると感じたからだ。

慈恵医大の創始者であり海軍軍医だった高木兼寛は、まだビタミンB1不足が脚気の原因であることがわかる前に脚気を撲滅したことで知られる。明治時代、脚気は結核と同様に国民病であり、大勢の人々の命を奪っていた。高木は疫学研究で食事の偏りが脚気を引き起こすことに気づき、海軍食を白米から麦飯に替えるという単純な方法で脚気の発生をほぼゼロに抑えることに成功したのだ。

話を元に戻そう。フィンセンの光療法(1903年ノーベル賞)から100余年の時を経た2006年、陽にあたったり光療法を受けることにより、体内のビタミンDが増え、その結果、免疫細胞がカセリシジンという人由来の抗結核物質を分泌し、結核菌を死滅させることがサイエンス誌に報告された。新しい治療法の開発が、メカニズム解明に100年先んじたことになる。医学ではしばしばみられるパターンだ。

2010年、私はビタミンDがインフルエンザの発症を予防しうることを発表した。PubMedという検索サイトに掲載されるや否や、世界各国から祝福のメールが届いた。その中に、ハーバード大医学部教授からのものも交ざっていた。「ぜひあなたの研究について教えていただきたい」というのである。この1通のメールがきっかけとなり、国際共同研究へと発展し、ロンドンには研究計画書を策定するために訪れていたのだ。

我々は1万人以上のビッグデータをメタ分析し「ビタミンDサプリメントを内服することにより、プラセボと比較して急性気道感染症(インフルエンザを含む上気道炎、気管支炎、肺炎)を2割、ビタミンDが少ない人においては7割予防する」ことを明らかにした。その結果がこの1月、イギリス医師会雑誌「BMJ」に掲載された。かつて喫煙が肺がんを増やすことを明らかにした研究論文を載せた超有名医学雑誌である。世界では毎年265万人が急性気道感染症で死亡していることを考えると朗報だ。

陽にあたれば体内のビタミンDレベルが上がる。陽にあたる、つまりただで急性気道感染症を予防できるということだ。

ヒポクラテス曰く;我々の内にある自然の力こそが、病を治癒するものである。


浦島充佳◎1962年、安城市生まれ。東京慈恵会医大卒。小児科医として骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院にて予防医学を学び、実践中。

文=浦島充佳

 

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