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プロジェクトを追いながら、その先に広がる宇宙ビジネスの可能性を探る。

2016年8月29日に発表されたHAKUTOのフライトモデル(Photo by Jun Sato/WireImage)

チームHAKUTOが参戦している「Google Lunar XPRIZE」。彼らは決してその賞金を目当てにレースに臨んでいるのではない。彼らの目はすでに、その後に広がる宇宙ビジネスの大いなる原野に向いている。

新たな産業の創出、宇宙産業の勃興、そこには夢では終わらない、リアルな戦略がある。前回に続きHAKUTOを主導するispace社・中村貴裕が宇宙ビジネスへの未来図を語る。


「チームHAKUTO、そしてispace社にとって、『Google Lunar XPRIZE』での優勝はもちろん重要な目標です。応援してくれているすべての人たちのためにも、必ず優勝したい。ただそれはあくまでも、通過点に過ぎない。ぼくらが最終的に見据えているのは、宇宙をビジネスにすることなのです」

では、どのようにして宇宙をビジネスにしようとしているのか、今回の「Google Lunar XPRIZE」から何を得ようとしてるのか、そう中村に訊くと、彼はマジックペンを取り出してホワイトボードに地球と月の絵を描き、そのふたつを一本の線で繋ぎながら、「それはまず宇宙のプラットフォームを握ることです」と答えた。

「宇宙のプラットフォームとは、輸送とデータだと考えています。現在、アメリカのSpaceX社やインドのPSLVなど、宇宙へ飛び立つロケットを開発する会社はどんどん増えています。それはロケットの安定供給が可能な下地ができ始めていることを意味しますが、同時にビジネス的にはすでにレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)化しつつあるということでもあります。ぼくらが狙うのは、そこではなく次の段階。月や惑星までの線、つまりロジスティクスと現地のデータなのです」

マーケット規模4兆円という試算

今回の「Google Lunar XPRIZE」での経験は、その宇宙のプラットフォームを握ることに大いに役立つとも語る。そしてその後に彼らが目をつけているビジネス、それはずばり「宇宙資源開発」だと言う。

「月や小惑星には水、レアアース、プラチナといったレアメタルなど膨大な資源が眠っています。2030年頃には、そのマーケット規模が4兆円になるという試算もあります」

宇宙資源開発といっても特別なことではない。こともなげに語る中村の話を聞いていると、そう思えてくる。そして、「宇宙での資源開発は、地上でのそれと同じような産業構造になるのではないか」とも中村は語る。

たとえば、地上での資源開発では、主にジュニアカンパニーとシニアカンパニーとに役割が分かれる。ジュニアカンパニーは資源がどこにあるかデータを採取して分析する。それらのデータをもとにしてシニアカンパニー、つまり石油メジャーなどの大企業が商社やゼネコンを動員して実際に資源を開発する。中村は「宇宙でもそれは同じ」だと言うのだ。

「宇宙は、新しい『場』というイメージですね。地上で資源開発を行うプラント、建機、データ収集・解析、通信などの各メーカーにとっては、産業の『場』が変わるだけで産業自体は変わらない。そして、ぼくたちのビシネスは、まずデータを販売するジュニアカンパニーのような位置づけになるかと思います。宇宙のデータは企業だけではなく、JAXAなど政府研究機関にも販売していける。サイエンスデータとしても意義が高いですから。その後、最終的には資源を売買するビジネスも手掛けていきたいと考えています」

もちろん未来のビジネスにとってクリアすべき課題も山積みだ。そのひとつに、地球と他惑星を往き来し、離着陸できるランダー、つまりロジスティクスを担う輸送船をいかに開発するかというものがある。

「実は『Google Lunar XPRIZE』では、他チームが開発するランダーの動向にも注目しています。ランダーは、宇宙のプラットフォームを握るうえでは欠かせない技術ですからね。そして、もうひとつの課題は、高頻度で宇宙に行き、データを収集して実績をたくさんつくること。そのふたつが、宇宙資源開発でイニシアティブを握る鍵になるはずです」

出光佐三に強いシンパシーを

「Google Lunar XPRIZE」以後の宇宙ビジネスへの道筋を理路整然と語る中村だが、こちらから矢継ぎ早にぶつけられた質問にもほとんど淀みなく、すらすらと答える。しかもその答えは、的確で分かりやすい。少し中村のキャリアにも触れておこう。

文=河鐘基 編集=稲垣伸寿

 

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