テレビやPC画面の前で過ごす時間が長い子どもは、そうでない子に比べて肥満や睡眠不足になりやすく、発達が遅れるリスクが高くなることを認識している人も多いだろう。しかし、自分の不在時に子どもに退屈な思いをさせないよう、テレビやiPadが必要になることもある。
米国小児科学会(AAP)は2011年、テレビやパソコンの使用は2歳未満の乳幼児に悪影響を及ぼすと報告した。しかし最近、AAPはその姿勢を多少緩和させたようだ。
10月21日に発表した報告書でAAPは「2歳未満の乳幼児の認知力、言語能力、運動能力や社会的・感情的能力を発達させるには、信頼のおける保護者と知的探究を行い、社会交流を持つことが必要だ」と指摘。生後およそ15か月未満の場合、教育的な内容だからといって、テレビやPCを長時間見せても望ましい効果は得られないとした。乳幼児の脳は未発達で、内容を理解できないというのがその理由だ。
一方でAAPは、生後18か月を過ぎると、大人が一緒に番組を見ながら内容の説明をすれば、乳幼児が「何かしら」を学ぶ可能性があるとの見解を示した。米教育省、米保健福祉省が同日に共同発表した政策概要でも、同様の見解が示された。
AAP報告書の筆頭著者であるミシガン大学の小児科医ジェニー・ラデスキー博士は、生後18か月の乳幼児の脳はきわめて未発達な段階のため、2次元の画面で見たものを3次元に変換して解釈するのが難しいかもしれないと指摘。だからこそ、大人が付き添って、説明を加えてあげることが不可欠なのだと説明した。
生後18か月から5歳までの子どもにテレビやパソコンを見せるにあたって、AAPでは次のような提言を行っている。
・質の高い番組を選び、子どもの理解を手助けできるよう一緒に見る。展開の早い番組は子どもにとって理解が難しいので避けること。また暴力的な内容や、ベルや笛の音など注意を逸らす音が多いアプリも避けること。
・「早い段階からテクノロジーに触れさせないと、子どもが後れを取ってしまう」とは考えないこと。いつ始めても、子どもはあっという間にテクノロジーの使い方を覚える。
・2歳から5歳までの子どもは、画面の前で過ごす時間を1日1時間までとすること。
・親が手本を示し、使っていない時はテレビなどの電子機器の電源を切っておく。食事の時にテレビやパソコンを見ないようにすることも大切だ。
・子どもをなだめるためにテレビやPCを使うのを避ける。飛行機の中や病院では便利なこともあるが、日常的にテレビやタブレット端末に頼ってしまうと、子どもが自分で感情をコントロールする学習の機会を奪ってしまう可能性がある。
・寝る1時間前からはテレビもPCも見せず、寝室から全ての電子機器をなくすこと。
家庭でメディア機器をどう利用するかについては、AAPのウェブサイトでプランを作成することができる。