現状では主にゲームのグラフィックに用いられるGPUは今後、ディープラーニング分野での活用が期待されている。GPUは同時に複数の演算処理を行なうことを強みとしており、一般のプロセッサを大幅に上回る速度でニューラルネットワーク処理を行なうことが可能だ。
AMDはこのGPUを同社のRadeon(レイディオン)ブランド配下に置き「FirePro S9300 x2」と呼んでいる。 グーグルは2017年からこの製品を同社のクラウドサービスのGoogle Compute Engineや機械学習プラットフォームのGoogle Cloud Machine Learning serviceに採用する。
グーグルに製品を採用されることは、データセンター事業の立て直しを図るAMDにとっては非常に喜ばしいことだ。AMDは今年10月に中国のアリババのデータセンターで同社のGPUが採用されたことを発表している。
AMDの製品主任のRaja Koduriはインタビューで「グーグルはGPUベースのインフラ構築を進めており、そこでAMDの技術を前面に押し出そうとしている」と述べた。「これまでAMDのディープラーニング領域への取り組みは知られていなかった。今回の提携は我が社にとって大きな第一歩となる」
競合のNvidiaに追撃を図るAMD
AMDの競合のNvidiaは、データセンター事業やディープラーニング市場で大きく前進を遂げている。Nvidiaは数年前からこの領域に進出し、初期投資の回収段階に入った。先週発表されたNvidiaの第3四半期決算ではデータセンター部門は前年同期比193%の成長で、売上は2億4,000万ドル(約262億円)に成長した。
Nvidiaは既にグーグルのような大手にチップの提供を行なっている。グーグルとしてはNvidiaに続くGPUサプライヤーを得ることで、価格交渉力をあげる狙いもあると見られる。
AMD側は今回のディールを契機に新たな市場に打って出ようとしている。「弊社のデュアルGPUサーバ製品はNvidiaよりも浮動小数点処理に優れ、より多くのメモリ帯域幅を持ちます」とAMDの担当者は述べた。
「AMDの製品は高度なニューラルネットワーク処理を、より速い速度で実行可能です。この領域での需要は非常に高く、今回に続く新たな顧客らとの取り組みも進行中です」
AMDは今回、ディープラーニングアプリの開発ツール「Radeon Open Compute Platform」のアップデートも行なった。このツールにはGPUでのプログラミングをサポートするソフトウェアが含まれている。
しかし、繰り返しになるが、この領域ではNvidiaがAMDのずっと先を行っている。Nvidiaはこれまで開発者向けのツールを長年にわたり提供してきた。AMDがこれに追いつくにはかなりの労力が必要になりそうだ。