一方で、共和党は富裕層の支持を大きく失った。年収10万ドル(約1,013万円)以上の人たちの多くは、今回は民主党支持に回ったとみられる。富裕層が共和党候補を支持しなかったのは、1964年の大統領選で同党候補となったバリー・ゴールドウォーター上院議員以来、初めてだ。
2012年の選挙で、バラク・オバマ大統領は国内の富豪上位10人のうち、8人の支持を取り付けた。そして、ヒラリー・クリントンはその支持を受け継ぎ、さらに拡大した。億万長者だけで行う予備選があれば、20対1くらいでクリントンが勝利していただろう。
こうした一連の変化は、世代と共に縮小してきた伝統的な中流層にとって、何を意味するのだろうか。世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、中流層の人口は減少し、上・下流層を合わせた数を下回っている。もはや米国の多数派ではないのだ。
トランプと米国民の今後
予測がつかないトランプの気性を考えると、彼がこれから何をするのか、予見するのは難しい。
ビジネスマンであるトランプと同じ「階級」の人たちは、圧倒的にクリントンを支持した。トランプ大統領(この言葉を書くことになるとは信じ難いが)にとっての明らかな課題は、こうした「敵」を罰することではなく、郊外や小さな街に住む白人中流層、トランプとは異なる世界の住人でありながら、彼を大統領の座に押し上げた人たちを大切にすることだ。
急進的な改革主義者の役割を果たそうとするならば、トランプは米国に多くの利益をもたらすことができるだろう。例えば、税制改革や連邦主義の再強化、エネルギー革命から得られる利益の確保、軍備の見直しなどだ。
問題は、トランプがこれらを実行するか、その能力があるか、という点だ。米国に自信を取り戻させるという約束を果たせるかどうかは、トランプ次第なのだ。米国民はそれらを憲法と基本的な良識に基づいた形で確実に、トランプに実行させる必要がある。