米広告業界における「若手重視」は時代遅れ?

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アメリカの広告業界は若者が中心で、各広告代理店のスタッフの平均年齢は38歳と、全業界の平均年齢よりも3歳若い。

また、25歳から44歳の従業員は、米国内の全労働者に占める割合が50%であるのに対し、同業界では60%以上を占めている。50歳以上の従業員はわずか5%で、彼らの大部分の所属はクリエイティブ部門ではない。

広告代理店はこれまで、各企業のマーケティング担当者たちに「価値ある対象顧客は35歳未満の若者のみだ」と吹き込んできた。
 
そして企業側は、自社の広告を制作する人々は、製品を購入するであろう人々(若者)と同じような人々でなければならないと信じ込まされてきたのだ。

若者に的を絞る手法は、それがブランドロイヤルティを生み出すという考え方に基づいているが、今やブランドロイヤルティなどという考え方は時代遅れだ。今の時代、メディアは細分化され、ブランドはますます増加し、テクノロジーも変化し続けている。消費者はあらゆるスクリーンで広告を見ており、無限の選択肢がある市場を難なく使いこなしている。

しかし、各代理店は時代遅れのやり方にしがみつき、クライアント企業に価値あるコミュニケーション・ソリューションを提示していない。
 
現在50代または60代のベビーブーマー世代は、2017年末までに米国の人口の半数を占めるようになり、可処分所得の70%を握ることになる。金額にして46兆ドル(約4,705兆円)を保有し、今後20年でさらに15兆ドル(約1,534兆円)を相続する見通しだ。
 
彼らは車や旅行、テクノロジーに大金を使い、消費者向けの全パッケージ商品への消費者支出の50%を占めている。ミシガン大学の調査によれば、ベビーブーマー世代を対象としたマーケティング活動は対ミレニアル世代よりも2倍効果をあげる可能性が高いと示されているが、実際に彼らを対象とした広告に費やされている広告費は全体のわずか5%(それも保険や医薬品に偏っている)だ。

20代だった頃のベビーブーマー世代(ペプシ世代)は、当時の米国で最大規模かつ最も気前よく消費を行うグループだった。だが年が経つにつれ、マーケティング担当者たちは“高齢のベビーブーマー世代”を対象に広告を展開すると自社製品に「古くさい」イメージがつくのではないかと恐れたのだ。
 
しかし実際は、大抵の場合において、ペプシ世代を無視することは、魚のいない場所で釣りをしているに等しい。

クリエイティブ部門にいる45歳以上の社員が幹部候補かリストラの対象になる理由は、数多くある。

第一の理由は、広告代理店に「経験は高くつく」という考えがあることだ。コスト削減を迫られるなか、彼らは若い人材を安く雇っている。

第二の理由は、仕事に求められる内容やペースを理由に、クリエイティブ担当が若手に偏っていることだ。より高齢の社員では極度の疲労が懸念される。
 
第三に、より高齢になると若手ほどテクノロジーに適応できないと考えられていることもある。

だがクリエイティブ担当の平均年齢が25歳で、車の購入者の平均年齢が52歳であることを考えると、これは問題だ。
 
クライアント企業が30歳未満のみを対象に商品を売るというのであれば、広告も30歳未満のスタッフでつくるのは理にかなうかもしれない。

だが実際、各企業は幅広い年代の顧客に訴える広告を依頼している。(もちろん例外はあるが)代理店で働く20代や30代の若者は、自分たちと異なる人々について一切の理解がないし、理解しようとも思っていない。

マーケティング責任者たちは、企業が求めるオーディエンスの心に響く広告を生み出すべく、ジェンダーや民族、宗教などの多様性と同時に、年齢における多様性も実現する取り組みを行っている広告代理店に目を向けるべき時なのかもしれない。ごく常識的なことだが。

編集=森 美歩

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