50機の超小型衛星で世界中を毎日観測/アクセルスペース 中村友哉

アクセルスペース代表取締役 中村友哉(写真=隼田大輔)

宇宙を舞台にビジネスを手がけるアクセルスペースは、広範囲を網羅するという衛星の強みを生かした画像インフラを展開する。各産業との連携によるソリューションに期待がかかる。

アクセルスペースは、2015年12月に地球観測画像データプラットフォーム「AxelGlobe」を発表した。超小型衛星を17年に3機打ち上げ、最終的には22年までに50機体制を構築する計画だ。

AxelGlobeは地上の車も判別できる分解能2.5mで世界中を毎日撮影・更新していく。新たな付加価値を提供できたポイントは、50機という小型衛星の数の多さと、「細かいものを見ようという方向性へ注力しなかったことにある」と中村は話す。

「地球観測は『どこまで細かく見えるかが価値だ』と考えられがちですが、それならドローンという選択肢もあります。しかし、広範囲を一度に見るという使い方は代替できません。我々は宇宙であることの価値を最大限に生かそうとしています」

宇宙業界は政府や自治体から「ここの衛星画像を撮ってください」というリクエストを受けるのが一般的だったが、それでは被災地の災害前の様子を振り返ることはできない。そこで、全世界を毎日撮影し、突発的なニーズにも応えられるようにした。

今回のサミットにおいて中村は、衛星画像の解析により、i-ROADの駐車スペースの発見や行き先の決定、旅の振り返りなど、i-ROADのあるライフスタイルをより楽しくする提案をした。

「俯瞰的に見るのが特徴の我々のプロダクトを、小さな乗り物にどう適用するかを考えるのは、非常に難しかったです。ただ、サービスの位置付けを再定義できたという点で、非常に良い経験でした」

AxelGlobeと様々な産業との連携には期待がかかる。精密農業分野では穀物の生育状況を詳細に把握できるし、エリアマーケティングでは出店候補地の効率的な絞り込みが可能だ。様々な変化を毎日観測し、統計的にトレンドを捉えれば、未来予測も可能となるかもしれない。

「各領域でビジネスを展開しているプレイヤーが、独自のノウハウや知見と衛星データを組み合わせ、ユーザーに対して付加価値の高いサービスを提供していく。そのような衛星データを中心としたエコシステム構築が我々の狙いです。まさにアップルのようなビジネスモデルをつくりたい」

小さな衛星の大きな可能性に期待したい。

アクセルスペース
資本金:19億5,699万円(資本準備金を含む)
設立:2008年8月8日
事業内容:超小型衛星等を活用したソリューションの提案、超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造、超小型衛星の打ち上げアレンジメント及び運用支援・受託、超小型衛星が取得したデータに関する事業

なかむら・ゆうや◎1979年、三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中に超小型衛星の開発に携わり、卒業後、特任研究員を経て2008年にアクセルスペースを設立。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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