テクノロジー

2016.08.15 15:30

ウェブの違法薬物販売、過去3倍に急増 ビットコイン決済も普及

David Orcea / shutterstock

ギリシャ神話に登場するヒドラは、首を切ると新たに2本の首が生えてくる怪物だ。違法ドラッグを販売する闇サイトは、まさにヒドラのように1つを摘発しても別のサイトが続々と立ち上がり、禁止薬物のまん延に歯止めがかかっていない

アメリカ連邦捜査局(FBI)は2013年に大手の闇サイト「シルクロード」を閉鎖に追い込んだものの、その後新たな闇サイトが数多く出現している。イギリスのマンチェスター大学とカナダのモントリオール大学が最近発表した調査結果によると、シルクロードの閉鎖後に違法ドラッグの取引量は3倍に増加したという。こうしたダークウェブ上の闇サイトでの取引きには、仮想通貨ビットコインが使用されている。

オランダ法務省がランド研究所の資金援助を得て実施した調査によると、Cryptomarketと呼ばれる闇市場や闇サイトは現在50ほど存在し、売り手と買い手が匿名で違法ドラッグや向精神薬、処方薬などの取引きをしている。欧州薬物・薬物依存監視センターによると、オランダはMDMAや大麻の主要生産国で、大麻樹脂やコカインの流通拠点でもある。オランダ政府は違法ドラッグの取引を取り締まるために、ダークウェブの実態調査を開始した。

オランダ法務省のレポートは、ダークウェブ以外でも薬物販売が横行している実態を指摘する。例えば「Chem.eu」というサイトは規制を逃れるため、「研究用試薬」という名目で違法ドラッグを販売している。同サイトにアクセスすると、麻薬に似た合成薬物が数多く売られている。

これらのサイトの免責事項には、利用者自身が法律の遵守に責任を負うと記されているが、何も意味をなしていないのが実情だ。これらのサイトを使えばダークウェブにアクセスしたり、麻薬ディーラーに接触しなくても違法ドラッグを容易に入手することができる。

アメリカでは州によって大麻の使用が合法化されており、麻薬取締局(DEA)は全面的な使用を禁ずる「スケジュール1薬物(Schedule One drug)」から大麻を外すことを検討していたが、タバコ業界のロビー活動もあって結局再分類は見送られた。このため、闇サイトをはじめとするオンラインでの違法ドラッグ取引量は今後も増加することが予想されている。合法的に麻薬を入手したければ、医師からオキシコンチン(麻薬系鎮痛剤)を処方してもらう方法もあるが、医師から処方を断られた場合はダークウェブにアクセスすれば、闇サイトが簡単に見つかってしまうのが現実なのだ。

編集=上田裕資

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