そんな状況を横目にバイドゥは8月3日、中国で初めての本格的ARプラットフォーム「DuSee」を発表した。DuSeeはスマホで読み込んだ情報を元に、コンピュータが仮想世界を作り上げる。例えば平面の画像から3Dグラフィックを表示することができ、バイドゥはイベントで、上海の地図を3Dイメージに転換し、拡大したり縮小したりした。
この技術はまずバイドゥの広告クライアント向けに提供される。ロレアルの新商品を紹介するグリーティングカードをバイドゥサーチのアプリで撮影すると、スマホの画面にはカードの上にピンクの花びらが舞う様子が映し出される。今後は自動車メーカーとコラボし、画面で車の色やサイズを変えられる商品を計画しているという。
Analysys International(易観国際)のアナリスト、ジャオ・ズーミンは、「これは中国で最初の本格的なAR商品だ。アリババとテンセント(騰訊)もARを研究しているが、バイドゥが一歩先んじた」と評価した。
バイドゥのチーフサイエンティスト、アンドルー・ウンは「スマホこそがAR技術を普及させるための最良のデバイスだ」と確信する。多くの人にとって、ARグラスやヘッドセットのようなハードウェアを購入するより、スマホのアプリを使う方がずっと敷居が低いからだ。
検索ビジネスで大苦戦中、売上は4割減
バイドゥは、ARの教育やヘルスケア、観光への活用を狙っている。例えば旅行者が観光地の遺跡跡にカメラを向けると、古代の姿を見ることができるようになるかもしれない。
「コンピュータの性能が上がれば、スマホは目の前にある物体の詳細や距離感を理解できるようになる。そうすれば我々は2つの世界をよりリアルに統合できるようになる」(ウン)
バイドゥは経営的に逆風にある中でARに進出した。本業の検索ビジネスは詐欺広告の掲載が大きな問題となり、信用が失墜した。今年第2四半期の利益は前年同期比36%減の24億元(約370億円)に落ち込み、バイドゥの売上高の回復は半年以上先になると見られている。
「バイドゥは、単なる検索エンジン運営業者からテック企業に脱皮できるか、いまが正念場だ」と長江商学院のジャンは語った。