ターゲットはなぜ、この問題に関して立場を表明すべきと考えたのだろうか。同社の広報担当はあるメディアに対して、次のように語っている。
「人々の間には様々な視点や見解がある。当然ながら、当社はその点を尊重している。自社の従業員に包括的な職場を、来店者に包括的な買い物の場を提供するということが意味するものを強く支持する企業として、当社は今回の対応が我々自身にとって、正しいものだったと考えている」
同社の顧客はすでに、若い世代が中心になりつつある。その点では、競合他社がうらやむ存在だ。同社にとって、自らの価値観を大切にすることは顧客、または従業員としての若者の支持を得るために重要なことなのだ。
ターゲットが同性婚を支持したのも、女性の管理職への登用に積極的なのも、そのためだ。子供向け玩具など一部の売り場を性別で区別するのをやめたのも、同じ理由からだ。
現代の小売業界に力を与えるテクノロジーを開発しているのは、ミレニアル世代だ。ターゲットや他社が新たなアイデアを見つけ出し、確立し、実用化するために開設したイノベーションのためのラボで、アルゴリズムを作成し、アプリを制作しているのは彼らなのだ。この若者たちに評価される雇用主であることは、ターゲットの成功に決定的な重要性を持っている。
だからこそ、同社は今回の方針表明を撤回していない。今の時点で撤回すればかえって、自社ブランドに傷をつける結果になることだろう。