リンチ長官は、アップルは容疑者のiPhone 5Cのパスコードを解除可能なOSを開発すべきだと発言し、アメリカ国民もそれを望んでいると主張した。
「国民は犯罪捜査のため、我々が任務を遂行することを願っています。適切な捜査のため、情報収集を行うことを望んでいるのです」
リンチ長官はさらに、アップルはこの事件において“第三者”であり、一企業がこの問題の決断を下していいのかと疑問を呈した。
「危険なのは、これがアップルの問題であるかのように考えられることですが、これは私たちの問題なのです」と長官は言う。
アップルは過去に容疑者のiPhone内のデータにアクセスするために協力しており、今回その態度を翻したことに“驚いている”とした。また、ニューヨーク地裁がアップルの立場を支持する判断を下したことには失望したと語った。FBIのコミー長官は前回の公聴会で、アップルの姿勢を“言うことを聞かない番犬”と表現していた。
しかし、シリコンバレーの企業やセキュリティ業界の著名人はアップルを支持している。グーグルとマイクロソフト、そして公開鍵暗号を発明したマーティン・ヘルマンもアップルに有利な法廷助言書を提出するとしている。グーグルのプライバシー担当弁護士も「問題は(製品の)デザインにあえて脆弱な部分を組み込もうとすることです」と説明する。
一部の政府関係者も、今回の要請は「政府が意のままにiPhoneを監視できる前例を作ることになり、犯罪者たちがiOSデバイスに侵入する道を切り開くことになる」としてアップルの判断を支持している。
かつてジョージ・ブッシュ政権で国土安全保障長官を務めたマイケル・チャートフも、アップル側の主張を支持している。
「製品のマルウェア版を作ってくれと企業に頼むのは法律的あるいは倫理的に正しいことでしょうか。私ならそれを脆弱性と呼びます」とRSAのアート・コビエロ元会長もアップルを支持している。
テック業界と政府の間に広がる大きな溝を埋めるため、Digital Equilibrium Projectというワーキンググループが設置され、打開策を探る動きも始まっている。しかし、両者の間の亀裂は、ますます広がるばかりかもしれない。