次世代のモビリティには、クリーン・ディーゼル、電動化、代替燃料の3つの方向性がある。欧州で新車販売の約半数を占めるクリーン・ディーゼルの燃費性能の高さは、一日に数百kmを移動することが一般的な欧州では実用面で魅力的だ。欧州委員会による自動車メーカーごとのCO2排出量を120g/kmまで削減する目標の達成のためにも欠かせない。
ただし、2021年には95g/kmへと一歩進めた目標が設定されており、ハイブリッド(HV)やプラグ・イン・ハイブリッド(PHV)といった電化の方向に舵を切り始めている。日本やアメリカ湾岸部ではトヨタがHVで先行し、GMがPHVの「ヴォルト」を第二世代へと進化させるなど、北米市場ではHVやPHVが浸透している。中国市場で勢いを見せるドイツ車メーカーは、アメリカ市場での電化の遅れの取り戻しと欧州のお膝元でのCO2削減もあわせて、急速にPHVを発表している。メルセデス・ベンツは2017年までに10種類、BMWは2016年中に4種類、VW、アウディ、ポルシェのグループで15車種のPHVを投入する予定だ。EVではテスラのような新しいプレイヤーも出てきているが、売れているのはノルウェー、スペイン、日本といった多額のインセンティブがある地域に限られる。画期的に長距離を走れる電池が発明されない限り、電動化の大本命はPHVだろう。
近年、一躍現実感を増した燃料電池車にも期待が集まる。水素ステーションなどのインフラの整備が必要で、一足飛びの普及は難しいが、化石燃料が限りあるのに対して、水素は地球上に最も多く存在する元素であり、枯渇の心配がない。長期的な視点で、育てていくべき分野ではある。
残された課題は、アフリカだ。むやみにクルマを進化させると、修理が難しくなる。アフリカに強いプジョー・シトロエン・グループでは、電池を使わない空気ポンプのHVや3気筒エンジンの1気筒を休止するなどの苦肉の策とも思える方法を駆使して、低燃費化をはかる方針だ。
将来を予測するのは難しいが、生物にも多様性が必要なように、これからの時代は自動車にも多様性が求められる。自動車の発明以来、より速く走れて、どこにでも行けることを目標に自動車は進化してきたが、今後は適材適所でクルマを使う、そんな時代になりそうだ。