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2016.01.16

胸やけの薬は危ない? まずは習慣を変えよう

g-stockstudio / Shutterstock

処方薬から市販薬への切り替えを認めるのに十分な安全性があると考えられてきた胸やけの薬に、新たな懸念が浮上した。

米医師会(AMA)の内科学専門誌「JAMAインターナル・メディシン」が先ごろ発表した研究結果によると、一般的に使用されている胸やけの薬(プロトンポンプ阻害薬、PPI)には、慢性腎疾患(CKD)との関連性が疑われるという。

2003年に胸やけの処方薬として初めて市販薬に認められたプリロセックのほか、処方薬のネキシウム、プロトニクス、プレバシドなどが胸やけに効果的だとされているが、これまでにも複数の研究によって、PPIが心臓発作のリスクを高める可能性があることが示されていた。

胸やけは、医学用語では胃食道逆流症(GERD)と呼ばれ、胃の内容物が食道へ逆流する症状を指す。中に酸が入った筋肉の袋が胃だと考えると、その上部には酸が入ったチューブ(食道)、下部には別のチューブ(小腸)が付いている。胃は食べ物を押しつぶして小腸の方へと押し出すが、酸に漬かった胃の内容物が食道に逆流してしまうことがあり、そのとき心臓の裏側に位置する食道が、胸部に灼熱(しゃくねつ)感をもたらす。

慢性的にGERDの症状を持つ人は、およそ5人に1人とされている。ただ、その人たちの全員が胸やけや痛みを感じるわけではない。げっぷが出る、喉が痛い、などというだけの人もいるし、何の症状もない人もいる。だが、長期間にわたってGERDを放置すれば、食道は大きな損傷を受け、食道がんを発症する場合もある。

PPIは分泌される胃酸の量を抑制することで、胃の内容物が逆流したときに起きる問題を緩和する。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や胃炎の治療にも有効だ。しかし、医師の多くは薬を処方する前にまず、日常の生活の中で次のことに注意するよう指導してきた。

太りすぎなら減量を──太ると胃が下から押し上げられ、胃酸を食道へ押し上げる

ゆったりした服を着る──ぴったりした服が胃を締め付ける場合もある

ストレスを管理・解消する──ストレスは胃をむかつかせ、胃酸の分泌量を増やす

飲酒量とカフェイン摂取量を減らし、禁煙する──酒、カフェイン、タバコは胃と食道のつなぎ目の部分にあたり、胃の内容物の逆流を防ぐ括約筋を弛緩させる

症状を悪化させる物を食べない──脂肪分の多い食品、チョコレート、炭酸飲料、かんきつ類、スパイスの効いた料理、ペパーミント、トマトソース、タマネギ、ニンニクなど
・食べる量を減らす

食後すぐに横にならない──横になると胃の内容物が小腸の方向に下がらなくなる

体の左側を下にして寝る──胃は逆向きの「C」の形をしているため、左を下にすると胃の内容物が食道から離れる

ベッドの頭側を高くする──または、ウェッジ型の枕を使う。普通の枕を重ねると体を前屈させる形になり胃が圧迫されるため、マットレスが傾斜を作るようにする

PPIが簡単に購入できるようになったことから、多くの人がこうした注意事項を実践する前に、安易に薬に頼るようになったのではないだろうか?生活習慣を変えるより、錠剤を服用する方が簡単かもしれない。だが、完璧に安全な薬は存在せず、服用期間が長くなれば、効果が薄らぐ場合もある。

安全性に懸念があるならば、まずは肥満やストレス、飲酒などGERDの根本的な原因への取り組みを強化すべきではないだろうか。あるデータによれば、GERDを持つ人の増加は、肥満のまん延と平行して起きているという。

もちろん、これまでの研究でPPIとCKD、心臓発作の関連性が最終的に確認されたわけではなく、さらなる研究が必要だ。ただ、やはり子供のころに両親からよく言われたとおり、「何でも口に放り込んではいけない」のだ。

編集 = 木内涼子

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