CONTRIBUTOR

田坂 広志

田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)GACメンバー。世界賢人会議Club of Budapest日本代表。

  • 「見えていることの強さ」[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    何年か前、朝のテレビ番組にコメンテーターとして出演していたとき、丁度、その番組が始まる時間に、都内で、警察が出動する犯罪事件が起こり、急遽、番組を実況中継に切り替えて放映した。そのとき、番組を担当するプロデューサーが語った言葉が、心に残っている。「この事件で被害に遭われた方のことを考えると、こんなこ ...

  • 人工知能革命によって「学歴社会」は崩壊する

    一昨年、東京の税理士会から、次のような講演依頼を受け、驚きを覚えるとともに、感銘を受けた。「これからやってくる人工知能革命によって、我々の業界の仕事は、10年以内に、半分が不要になると思っています。そのときに備え、いま、我々税理士が、どのような能力を身につけておかなければならないか、教えて頂きたい」 ...

  • 「人生100年時代」の陥穽 [田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    最近、「ライフ・シフト」という言葉とともに「人生百年時代」という言葉が、しばしば耳に入ってくる。それは、グラットンとスコットの共著書『The 100 Year Life』の影響もあるのだろう。たしかに、食事栄養の改善と医療技術の進歩で、我々の寿命は確実に長くなっており、誰もが百歳まで生きる可能性が生 ...

  • 深く考える力[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    毎月、この連載エッセイを本誌に寄稿しているが、読者から、しばしば、次のような質問を頂く。「どこから、その新たな発想が生まれてくるのか」「どうすれば、そうした深い思考ができるのか」これらのエッセイに、そうした発想や思考があるかは、謙虚に読者の判断に委ねるべきであるが、もし、それがあるとすれば、その理由 ...

  • リーダーの話術の神髄[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    毎年、年賀交換会の時期に必ず思い出す情景がある。それは、37年前、筆者が新入社員の頃、自社の本社ビルで行われた年賀交換会に出席したときのこと。恒例の社長の年頭訓示を、本社の全社員が聴くという場での情景である。 この年の年賀交換会は、社員にとって、いささか気持ちの重い場であった。この企業の業績は、業界 ...

  • 人生のすべての記憶[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    大学時代のこと。登山部に所属するある友人が岩登りをしていたとき、危険な岩場で、滑落事故に遭った。仲間の見ている前で、彼は、足を滑らせ、岩の斜面を、谷底に向かって滑り始めた。 その瞬間、誰もが、命を失う事故になると、固唾を呑んだ。しかし、次の一瞬、彼は、岩場に生えていた小さな灌木に引っかかり、九死に一 ...

  • 「完璧主義者」の真の才能[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    DVDやブルーレイという映像メディアが主流になったことによって、誰もが手軽に高精細度の映像とリアルな音響を楽しめるようになった。そして、もう一つ、誰もが楽しめるようになったのが、「音声解説」である。それは、その映画を作った監督や製作者が、映画の全編のシーンを流しながら、それぞれのシーンの意図や俳優の ...

  • 正念場の学び[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    1979年のプロ野球日本シリーズは、セ・リーグの広島とパ・リーグの近鉄との対決であったが、伝説的な「江夏の21球」のエピソードで知られる、壮絶な戦いとなった。それは、3勝3敗で迎えた第7戦。勝利したチームが日本一の栄冠に輝く試合、1点差を追う近鉄が、9回裏ノーアウト満塁と広島のリリーフエース江夏豊投 ...

  • 「直観」を閃かせる技法[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    我々は、日々の仕事と生活の中で、極めて難しい問題に直面し、最後は「直観」で決めなければならない状況に置かれるときがある。では、そのとき、「直観」を閃かせる技法というものがあるのだろうか。その技法について考えさせる、興味深いエピソードがある。実際にあった話である。ある企業で、マネジャーのA氏が、重要な ...

  • プロが育たない理由[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    プロ野球の大打者であった落合博満氏が、テレビで解説者をしていたときのこと。その日のピッチャーは、切れ味の良いフォークボールが決まり、三振の山を築いていた。それを見たアナウンサーが、聞いた。落合さんなら、あの鋭いフォーク、どう打ちますか?その質問に対して、落合氏は、飄々とした風情で答えた。 ああ、あの ...

  • 直観力を身につける二つの道[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    直観力とは、いかにして身につくものか? この問いに対して、多くの人々は、直観力とは、「論理」とは対極にある「感覚」の力を磨くことによって身につくものであると考えている。しかし、それは真実であろうか。そのことを考えさせるのが、将棋の世界で五つの永世称号を得た大山康晴棋士のエピソードである。冬のある日、 ...

  • 謙虚さと感謝の「逆説」[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    かつて、ある書籍の対談で、臨床心理学者の河合隼雄氏と語り合ったが、そのとき、人間が身につけるべき「謙虚さ」について話題が及んだ。学者としてだけでなく、数多くの心理カウンセリングの経験を積んでこられた河合隼雄氏。この対談においても、いつものように飄々とした風情で、様々な洞察を語られたが、この「謙虚さ」 ...

  • 創造という秘密の行為[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    若き日に、ビジネスパーソンとして仕事をしていた時代、上司から注意を受けた。「競合企業もいる会議の場では、大切なアイデアを話すな。アイデアを盗まれるぞ……」この上司の忠告は、ビジネスや人生における処世の知恵としては、正しいアドバイスであり、自分のことを思って言ってくれた上司 ...

  • 潜在意識のマネジメント[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    心理学の世界に、「サブリミナル効果」という言葉がある。例えば、映画館において上映される映像に、観客の表層意識では気がつかない閾値下(サブリミナル)のレベルで、ほんの一瞬、しかし、繰り返し、「コークを飲め」「ポップコーンを食べろ」という文字を挿入しておくと、映画を見終わった後、多くの観客が、無意識に、 ...

  • 「共生」という思想を超えて[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    1977年にノーベル化学賞を受賞した、イリヤ・プリゴジン博士が、かつて、その著作の中で、次の言葉を述べている。我々人間は、自然から生まれて、なお、自然の一部である。この思想は、21世紀において、極めて重要な思想となっていくだろう。なぜなら、我々は、永く続いた欧米文化の影響で、「自然」と「人工」という ...

  • 「美しさ」という基準[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    1987年、映画『アンタッチャブル』で、アカデミー賞・助演男優賞を受賞した俳優、ショーン・コネリーが、かつて、その人生の転機において、次の言葉を語っている。「決められた道を歩むことは、美しくない」これは、大ヒットしたアクション映画、「007シリーズ」のヒーロー、ジェームズ・ボンド役を降り、一人の演技 ...

  • 人生で起こること、すべて良きこと[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    ある男性が、海外出張のとき、自動車を運転していて、一瞬の不注意から、瀕死の重傷を負う事故に遭った。そして、運び込まれた現地の病院での大手術によって、その男性は、九死に一生を得たが、残念ながら、左足を切断する結果になってしまった。意識が回復し、左足を失ったことを知ったその男性は、一瞬のミスによって迎え ...

  • 「成功者」の不思議な偶然[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    人生において優れた仕事を成し遂げ、世の中から「成功者」と呼ばれる政治家や経営者、学者や文化人について、興味深い調査結果が報告されている。その調査とは、これら「人生の成功者」が書いた自叙伝や回想録を読み、その中で、最も良く使われている言葉、最も多く出てくる言葉を調べたものであるが、その結果は、全く意外 ...

  • 才能の開花を妨げる「迷信」[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    世の中に、自分の才能を開花させたいと願う人は多いが、その願い通り、自分の中に眠る才能を開花させる人は少ない。それは、なぜであろうか。その一つの理由を教えてくれる、興味深いエピソードがある。何年か前、あるテレビ番組で、世界的なチェロ奏者、ミッシャ・マイスキーが、子供たちに音楽を教えていた。そして、その ...

  • 「明日、死ぬ」という修行[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    経営の世界において、昔から語られてきた一つの格言がある。経営者として大成するには、三つの体験の、いずれかを持たねばならぬ。戦争か、大病か、投獄か。ここで投獄とは、文学者・小林多喜二が思想犯として逮捕され、拷問で獄死するような時代の投獄のことであり、この三つの体験は、いずれも「生死の体験」を意味してい ...