CONTRIBUTOR

田坂 広志

田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)GACメンバー。世界賢人会議Club of Budapest日本代表。

  • 全く別の人生を歩む「もう一人の自分」への共感

    現在、様々な倫理的、社会的問題を孕みながらも、世界各国で実用化に向けた開発が急速に進められているクローン技術。このクローン技術をテーマとしたアメリカのSF映画に、2000年に公開された『シックス・デイ』という作品がある。後に、カリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガーが主人公アダム ...

  • 人類が考慮すべき、もう一つの「生態系」

    電気自動車会社テスラ・モーターズの経営者であり、スペースX社の経営者でもある、天才起業家イーロン・マスクは、2020年代に有人探査機を火星に送り込み、それを足掛かりに、40年から100年をかけて火星を人間の住める環境に改造する「テラフォーミング」という計画を提唱している。また、オランダの民間組織マー ...

  • 他者に対する「共感力」を身につけるには

    米国のSF映画に、1966年に制作された『ミクロの決死圏』(Fantastic Voyage)という名作がある。この映画は、脳に障害を負った患者を救うために、医師チーム5人が、最先端科学技術によって血管よりも小さなミクロサイズに縮小され、注射によって患者の体内に送り込まれ、患部の治療に向かうという物 ...

  • 英雄のいない国が、不幸なのではない

    この国が君のために何を為し得るかを問うことなかれ。君がこの国のために何を為し得るかを問いたまえ。 これは米国の第35代大統領、J.F.ケネディの就任演説の有名な一節であるが、スピーチライター、テッド・ソレンセンの名文としても知られている。 我が国においても、このケネディの言葉を好む政治家は多いが、こ ...

  • 「守・破・離」で身に付く一流職業人の世界の味わい

    一流のプロの世界とは、いかなるものか。そのことを考えさせる、興味深いエピソードがある。ある大都市の首長選挙でのこと。 二人の候補者が激しく競い合う選挙において、両陣営の選挙自動車が街中を走り回り、住民に対して懸命に支持を呼びかけていた。その選挙戦のさなか、ある選挙事務所の前を、味方の陣営の選挙自動車 ...

  • 21世紀の文学の新たな役割[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    鉄血宰相と称せられたプロイセン・ドイツの政治家、オットー・フォン・ビスマルクは、かつて、次の言葉を遺している。「愚者は、経験に学び、賢者は、歴史に学ぶ」この言葉の原意は、愚者は、自分独りの限られた経験で物事を考えるが、賢者は、他の多くの人々の経験から学ぶというものであり、「他の多くの人々の経験」が「 ...

  • ムカデの寓話から紐解く「悟り」とは何か

    悟りの境地とは何か。しばしば、「無心」や「無我」という言葉で表されるそれは、いかなる心の状態を指しているのか。その意味を考えさせる寓話がある。「百足」と書いて「ムカデ」と読む、奇妙な虫の寓話である。ある暑い夏の日、ムカデが一生懸命に歩いていた。すると、通りかかったアリが言った。「ムカデさん、凄いです ...

  • 「アラビアのロレンス」の名シーンが示唆する「運命とは何か」

    我々の人生には、果たして「運命」というものが存在するのか。人生は、予め、運命によって定まっているのか、運命など存在しないのか。それは、誰もが一度は考えたことのある問いであろう。この「運命」というものについて考えるとき、必ず心に浮かぶ映画がある。それは、巨匠デヴィッド・リーン監督によって1962年に制 ...

  • 人工知能の「やりきれなさ」といかに向き合うか

    2004年に公開されたSF映画『アイ,ロボット』において、人工知能の問題を深く考えさせられるシーンがある。それは、主人公のスプーナー刑事が、交通事故に遭遇したシーンである。その事故により、自分の車と相手の車が河の中に投げ込まれたとき、救助に向かったロボットが、瞬間的に、スプーナーと相手の車に残された ...

  • マネジャーの極意は、自分自身の心の「重心」を定めること

    2000年に、『こころの生態系』という書籍で、臨床心理学者の河合隼雄氏と対談をしたときのことである。「人間集団を相手にしたグループ・セラピーでは、メンバーの心が互いに複雑に結びついた『心の生態系』とでも呼ぶべきものに処することになりますが、それに、どう処すれば良いのでしょうか」その筆者の質問に対して ...

  • ダライ・ラマ法王と科学者の対話の場に招かれて

    2009年11月、ダライ・ラマ法王と五人の科学者の対話の場に招かれた。 それは「科学と宗教の対話」をテーマに掲げた場であったが、数千人の聴衆を前に、一人の科学者として筆者が語ったのは、「21世紀、科学こそが、我々の心の中に、最も深い宗教的情操を育んでいく」という予見であった。 こう述べると、読者の中 ...

  • 才能を開花させる技法[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    自分の中に眠る才能を開花させたい。それは、誰もが持つ願いであろう。では、どうすれば才能が開花するのか。実は、ある「才能」が開花するとは、その人間の中から、その才能に見合った「人格」が現れてくることに他ならない。こう述べると、驚かれる読者もいるだろうが、実際、世の中では、次のような言葉がよく使われる。 ...

  • 人類の幼年期の終わり[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    かつて、SF小説の巨匠、アーサー・C・クラークが、『地球幼年期の終わり』(Childhood’s End)という作品を遺している。現在の人類は、人間に譬えて言えば、まだ幼年期にあること、そして、その幼年期が終わるとき何が起こるかを描いた、想像力に満ちた作品である。また、『資本論』という歴 ...

  • リーダーの究極の力[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    2018年、サッカー・ワールドカップ、ロシア大会。この大会で日本代表チームを率いた西野朗監督は、1次リーグ第3戦、ポーランドとの試合において、冷静な計算のもと、リードされている状況で、最後の10分間、敢えて時間稼ぎのためのパス回しを選手に指示し、2位を競うセネガルにフェアプレー・ポイントで上回り、リ ...

  • 戦略思考の深み[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    戦略思考とは何か。そのことを考えるとき、いつも思い起こすエピソードがある。それは、かつてエドワード・デボノが『水平思考の世界』という著書の中で紹介した、問題解決のエピソードである。あるとき、米国の大都市にある超高層ビルのオーナーが、エレベーターの数が足りないという問題に直面した。そのビルで働く人々の ...

  • 「見えていることの強さ」[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    何年か前、朝のテレビ番組にコメンテーターとして出演していたとき、丁度、その番組が始まる時間に、都内で、警察が出動する犯罪事件が起こり、急遽、番組を実況中継に切り替えて放映した。そのとき、番組を担当するプロデューサーが語った言葉が、心に残っている。「この事件で被害に遭われた方のことを考えると、こんなこ ...

  • 人工知能革命によって「学歴社会」は崩壊する

    一昨年、東京の税理士会から、次のような講演依頼を受け、驚きを覚えるとともに、感銘を受けた。「これからやってくる人工知能革命によって、我々の業界の仕事は、10年以内に、半分が不要になると思っています。そのときに備え、いま、我々税理士が、どのような能力を身につけておかなければならないか、教えて頂きたい」 ...

  • 「人生100年時代」の陥穽 [田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    最近、「ライフ・シフト」という言葉とともに「人生百年時代」という言葉が、しばしば耳に入ってくる。それは、グラットンとスコットの共著書『The 100 Year Life』の影響もあるのだろう。たしかに、食事栄養の改善と医療技術の進歩で、我々の寿命は確実に長くなっており、誰もが百歳まで生きる可能性が生 ...

  • 深く考える力[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    毎月、この連載エッセイを本誌に寄稿しているが、読者から、しばしば、次のような質問を頂く。「どこから、その新たな発想が生まれてくるのか」「どうすれば、そうした深い思考ができるのか」これらのエッセイに、そうした発想や思考があるかは、謙虚に読者の判断に委ねるべきであるが、もし、それがあるとすれば、その理由 ...

  • リーダーの話術の神髄[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    毎年、年賀交換会の時期に必ず思い出す情景がある。それは、37年前、筆者が新入社員の頃、自社の本社ビルで行われた年賀交換会に出席したときのこと。恒例の社長の年頭訓示を、本社の全社員が聴くという場での情景である。 この年の年賀交換会は、社員にとって、いささか気持ちの重い場であった。この企業の業績は、業界 ...