CONTRIBUTOR

田坂 広志

田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)GACメンバー。世界賢人会議Club of Budapest日本代表。

  • 「自然首都圏」が生まれる時代

    1987年、筆者が米国のシンクタンクに着任したとき、深く感銘を受けたことがある。それは、そのシンクタンク傘下の研究所 で開催される会議に出席したときのこと。シアトル郊外にある研究所の門を入ると、そこは大きな森の中であり、受付はリゾート風のコテージであった。チェックインを済ませると、その森の中のコテー ...

  • 言葉を語るとき問われるもの

    かつて、ある詩人が、「現代は、香りのある言葉に“手垢”がついてしまう時代。詩人にとっては受難の時代である」と嘆いている。たしかに、その通りであろう。昔から、日本語には、香りのある言葉、余韻のある言葉、深みのある言葉が数多くあったが、コマーシャリズム全盛の現在、マスメディアに溢 ...

  • AIが故人を蘇らせるとき

    令和元年の大晦日、恒例の紅白歌合戦において多くの観衆を驚かせたのは、AIとCGの最先端技術によって再現された美空ひばりの歌唱であろう。国民的スターでもあった往年の大歌手が「あれから」という新曲を披露したのだが、予想通りメディアには賛否の声が溢れ、特に「故人を冒涜するものだ」「死者の身勝手な利用だ」と ...

  • 「蜘蛛の糸」のポストコロナ社会

    現在、世界中を危機に陥れている新型コロナウイルス感染症。では、このパンデミックの凄まじい脅威を経験した世界は、これから、どのように変わっていくのか。そのことを考えるとき、まず最初に、我々が覚悟しておくべきことがある。 多くの専門家が指摘するように、この新型コロナウイルスによる感染拡大は、第2波、第3 ...

  • 賢明なもう一人の自分

    我々誰の心の中にも「賢明なもう一人の自分」がいる。そう述べると驚かれるかもしれないが、そのことを教えてくれる映画の一場面がある。それは、二人の名優、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの共演による1984年の米国映画『恋におちて』の一場面であるが、夫を持つ身であるモリーは、妻帯者のフランクを好き ...

  • 人生100年時代の覚悟

    プロ野球において、シーズン序盤に好投を見せ、順調に勝ち星を挙げていた投手が、夏場を迎えて調子を落とし、勝てなくなると、評論家が決まって語る言葉がある。「彼は、シーズンオフの走り込みが足りなかったのですよ。だから、消耗が激しくなる夏場が来ると、スタミナ不足になるのです」たしかに、プロ野球の世界では、ど ...

  • 不運が幸運に転じるとき[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    科学がどれほど発達しても、未だに、その存在が証明できないものがある。それが「運気」と呼ばれるもの。しかし、それにもかかわらず、我々の多くは、その存在を信じ、ときに運気を占い、ときに運気を高めるために、色々な方法を試してみる。その方法については、古今東西、多くの書籍が様々な技法を語っているが、では、そ ...

  • 「哲学」を学びたいときに、身につけるべきこと

    昨今、世の中に広がる「教養ブーム」の中で、「哲学」についても、多くの人々の興味と関心が集まっている。では、「哲学」というものに「究極の問い」があるとすれば、それは、いかなる問いであろうか。それは、次の二つの問いであると言われている。なぜ、世界は、ここにあるのか。なぜ、自分は、ここにいるのか。 これは ...

  • 全く別の人生を歩む「もう一人の自分」への共感

    現在、様々な倫理的、社会的問題を孕みながらも、世界各国で実用化に向けた開発が急速に進められているクローン技術。このクローン技術をテーマとしたアメリカのSF映画に、2000年に公開された『シックス・デイ』という作品がある。後に、カリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガーが主人公アダム ...

  • 人類が考慮すべき、もう一つの「生態系」

    電気自動車会社テスラ・モーターズの経営者であり、スペースX社の経営者でもある、天才起業家イーロン・マスクは、2020年代に有人探査機を火星に送り込み、それを足掛かりに、40年から100年をかけて火星を人間の住める環境に改造する「テラフォーミング」という計画を提唱している。また、オランダの民間組織マー ...

  • 他者に対する「共感力」を身につけるには

    米国のSF映画に、1966年に制作された『ミクロの決死圏』(Fantastic Voyage)という名作がある。この映画は、脳に障害を負った患者を救うために、医師チーム5人が、最先端科学技術によって血管よりも小さなミクロサイズに縮小され、注射によって患者の体内に送り込まれ、患部の治療に向かうという物 ...

  • 英雄のいない国が、不幸なのではない

    この国が君のために何を為し得るかを問うことなかれ。君がこの国のために何を為し得るかを問いたまえ。 これは米国の第35代大統領、J.F.ケネディの就任演説の有名な一節であるが、スピーチライター、テッド・ソレンセンの名文としても知られている。 我が国においても、このケネディの言葉を好む政治家は多いが、こ ...

  • 「守・破・離」で身に付く一流職業人の世界の味わい

    一流のプロの世界とは、いかなるものか。そのことを考えさせる、興味深いエピソードがある。ある大都市の首長選挙でのこと。 二人の候補者が激しく競い合う選挙において、両陣営の選挙自動車が街中を走り回り、住民に対して懸命に支持を呼びかけていた。その選挙戦のさなか、ある選挙事務所の前を、味方の陣営の選挙自動車 ...

  • 21世紀の文学の新たな役割[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    鉄血宰相と称せられたプロイセン・ドイツの政治家、オットー・フォン・ビスマルクは、かつて、次の言葉を遺している。「愚者は、経験に学び、賢者は、歴史に学ぶ」この言葉の原意は、愚者は、自分独りの限られた経験で物事を考えるが、賢者は、他の多くの人々の経験から学ぶというものであり、「他の多くの人々の経験」が「 ...

  • ムカデの寓話から紐解く「悟り」とは何か

    悟りの境地とは何か。しばしば、「無心」や「無我」という言葉で表されるそれは、いかなる心の状態を指しているのか。その意味を考えさせる寓話がある。「百足」と書いて「ムカデ」と読む、奇妙な虫の寓話である。ある暑い夏の日、ムカデが一生懸命に歩いていた。すると、通りかかったアリが言った。「ムカデさん、凄いです ...

  • 「アラビアのロレンス」の名シーンが示唆する「運命とは何か」

    我々の人生には、果たして「運命」というものが存在するのか。人生は、予め、運命によって定まっているのか、運命など存在しないのか。それは、誰もが一度は考えたことのある問いであろう。この「運命」というものについて考えるとき、必ず心に浮かぶ映画がある。それは、巨匠デヴィッド・リーン監督によって1962年に制 ...

  • 人工知能の「やりきれなさ」といかに向き合うか

    2004年に公開されたSF映画『アイ,ロボット』において、人工知能の問題を深く考えさせられるシーンがある。それは、主人公のスプーナー刑事が、交通事故に遭遇したシーンである。その事故により、自分の車と相手の車が河の中に投げ込まれたとき、救助に向かったロボットが、瞬間的に、スプーナーと相手の車に残された ...

  • マネジャーの極意は、自分自身の心の「重心」を定めること

    2000年に、『こころの生態系』という書籍で、臨床心理学者の河合隼雄氏と対談をしたときのことである。「人間集団を相手にしたグループ・セラピーでは、メンバーの心が互いに複雑に結びついた『心の生態系』とでも呼ぶべきものに処することになりますが、それに、どう処すれば良いのでしょうか」その筆者の質問に対して ...

  • ダライ・ラマ法王と科学者の対話の場に招かれて

    2009年11月、ダライ・ラマ法王と五人の科学者の対話の場に招かれた。 それは「科学と宗教の対話」をテーマに掲げた場であったが、数千人の聴衆を前に、一人の科学者として筆者が語ったのは、「21世紀、科学こそが、我々の心の中に、最も深い宗教的情操を育んでいく」という予見であった。 こう述べると、読者の中 ...

  • 才能を開花させる技法[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

    自分の中に眠る才能を開花させたい。それは、誰もが持つ願いであろう。では、どうすれば才能が開花するのか。実は、ある「才能」が開花するとは、その人間の中から、その才能に見合った「人格」が現れてくることに他ならない。こう述べると、驚かれる読者もいるだろうが、実際、世の中では、次のような言葉がよく使われる。 ...