グーグルのメールプラットフォームを利用する30億人のユーザーにとって、大きな変化が近づいている。
このアップデートは本当に必要なもので、スパムやマルウェアがプラットフォームを悩ませ続け、AIを悪用した攻撃という新たな脅威が姿を現す中、ユーザー側が再び一定のコントロールを取り戻すには新しいアプローチが必要だ。
筆者が昨年報じたとおり、その一例となるアップグレードが、アップルの「メールを非公開」を模倣したメールアドレスのマスク機能だ。あらゆるウェブサイトやサービスに実際のアドレスを渡すのではなく、別途作成したアドレスを提供することで、どこからともなくデータブローカーのリストに載り、スパムの原因となって戻ってくる事態を減らすことを狙っている。
これは連絡先情報を求められた際に新しいメールアドレスを作成し、そのアドレスを相手に渡す仕組みだ。そのアドレスに届いたメールは通常の受信トレイに転送されるが、もしマーケティング担当者などに流れて迷惑メールが増え始めたら、転送を停止してスパム、あるいはそれ以上の被害を食い止めることができる。マスクしたアドレスから返信できるようにもなるはずだ。
今週、Android Authorityが報じたところによると、「この新しいオプションの開発はどうやら順調に進んでいる。実際に使えるようになれば、過去に見つかったコードから判断して、アップルの『メールを非公開』機能と同様に、そのアプリやウェブサイト向けに使い捨てや制限付きの新しいメールアドレスを生成するオプションが提示される見込みだ。その新しいアドレスに届いたメールはメインアドレスへ自動的に転送されるが、メインアドレス自体は公開されない。スパムの被害を避けるために、転送はいつでも停止できる」という。
ベータ版のコードを解析したAndroid Authorityチームは、マスクされたアドレスがグーグルのアドレス自動補完の一部になると考えている。メールアドレスの入力欄が検出されるとオプションが開き、新しい機能が提示される仕組みだ。現時点で設定を触ってもまだ新しいメールアドレスは提示されないが、「グーグルがサーバー側でエイリアス生成システムを有効化する必要があるのだろう」とされている。
筆者がこれまで指摘しているように、メールそのものが変革を迫られている。現在のメールプラットフォームは私たちのコミュニケーション行動の変化や、特にメッセージング分野で定着しているベストプラクティスを十分に取り入れていない。このためイーロン・マスクがXmailのような新構想をほのめかすと、大きな注目を集めるのだ。今回のアップデートはそういった抜本的な変化ではないが、一助にはなる。
Gmailユーザーにとって問題なのは、長年使ってきたアドレスがすでに数え切れないほどのスパム送信元に漏れている場合、全面的な乗り換えをすべきかどうかだ。新しいアカウントとアドレスを作成し、古いアカウントからのメールをしばらくリダイレクトすれば、この新機能の恩恵を最大限に受けられる。大きな変化だが、迷惑メールで悩まされている人にとっては、唯一の有効策かもしれない。
同時に、今年さらにアップグレードが進むことが望まれる。理想的には、端末側のAIを活用し、常にサーバー側のセキュリティに頼らなくても済むスパムや脅威の検知が実装されるのが望ましい。他の分野における技術の進歩を考えれば、それこそがより自然な進化といえる。