アリババは1月1日の証券取引所への届け出書類で、中国のプライベートエクイティ企業であるDCP Capitalが、香港市場に上場するサンアートの70%以上の株式を取得することに合意したと発表した。サンアートは台湾系の小売りブランドであるRTマート(大潤発)や、中国版コストコと呼ばれるM-Clubを中国で運営している。ニューヨークと香港市場に重複上場するアリババは、この売却によって132億元(約2840億円)の損失を計上すると見込んでいる。
香港を拠点とするジェフリーズのアナリスト、トーマス・チョンによると、市場は、以前行なったサンアートの発表やアリババが先月、百貨店チェーンのインタイム(銀泰)の売却を発表したことを受けて、すでに今回の売却を予想していたという。
「この売却は、アリババのコア事業への集中と株主への価値の還元という戦略に沿ったものだ」とチョンは1日のリサーチノートで述べている。
アリババは、ネットとリアル店舗の融合を目指して2017年に初めてサンアートに出資し、2020年にさらに36億ドル(約5670億円)を投入して傘下に収めていた。同社は、顧客分析ソフトを用いたオムニチャネル配送や、カスタマイズされたショッピング体験といった新小売戦略での協業を目指していたが、中国経済が厳格な新型コロナ対策や長引く不動産危機に苦しむ中、この戦略は期待どおりの成果を上げることができなかった。
売上の減少に苦しむサンアートは、2024年の中間報告によると、不採算店舗の閉鎖や2万人近い従業員の削減を進めている。同社の株価は、ここ5年間で約80%下落し、現在の時価総額は約180億香港ドル(約3650億円)に沈んでいる。
アリババもまた、激化する市場の競争に直面している。近年は、格安EコマースサイトのTemu(テム)の運営元のPDDホールディングスなどの競合に市場シェアを奪われている。エディ・ウーCEOを含む新経営陣の下でアリババは、人工知能(AI)を活用したマーケティングやコストパフォーマンスの高い商品の促進によって失われた地位を取り戻そうとしている。
(forbes.com 原文)