テクノロジー

2024.12.16 11:30

グーグルの量子コンピュータ用チップ「Willow」がゲームチェンジャーである理由

グーグルの最新量子プロセッサ「Willow(ウィロー)」(VCG/VCG via Getty Images)

グーグルの最新量子プロセッサ「Willow(ウィロー)」(VCG/VCG via Getty Images)

この2年間、IBM、グーグル、マイクロソフト、インテルなど各社が主催する教育セミナーや個別説明会を通じて、この技術に関する理解を深めてきた。その過程で、量子コンピューティングがヘルスケアや金融、科学研究などあらゆる分野を一変させる可能性を秘めていること、そしてそれが今後のコンピューティング分野でどのような役割を果たし得るかが、より明確になった。ただし、これまで量子コンピューティングが主流になれなかったのは、大規模化によって生じるエラーや実用性の確保といった深刻な課題が立ちはだかっていたためだ。


米国時間12月9日に、グーグルが最新の量子プロセッサ「Willow(ウィロー)」を発表したことは、この分野における大きな飛躍を示している。そのスペックや機能から判断するに、Willowは量子コンピューティングを単なる技術的好奇心の対象から、実用的なツールへと押し上げる可能性を持つブレークスルーだ。

Willowの計算能力は驚異的だ。ある複雑な計算問題において、Willowは5分未満で解を出せる。その同じ問題を、現行最速の従来型スーパーコンピュータで処理すると、約10セプティリオン年(セプティリオンは1の後に0が24個続く数)かかるとされる。この圧倒的な性能は、量子技術が秘める潜在力を雄弁に物語っている。だがWillowが真に注目すべき点は、この分野最大の課題であるエラー率への本格的な取り組みにある。

過去30年近く、量子コンピューティングを阻んできた根本的な障壁はその信頼性だった。量子ビット(キュービット)を増やせば増やすほど、エラーが増える傾向が続いてきたのだ。ところがWillowは、キュービットを増やしてもエラー率を指数関数的に減らせる設計を示している。単にキュービット数を増やすのではなく、より安定したキュービットを提供することで、量子コンピュータが実世界の問題に本格的に対応するために欠かせない「信頼性」への道筋を示したわけである。
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翻訳=酒匂寛

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