iPhone SEとは何か
次期モデルは、iPhone SEとして第4世代目となる。2016年に登場したSEシリーズは、中価格帯を狙ったiPhoneであり、価格は約450ドル程度(日本では税込6万2800円から)で、メインシリーズの標準モデルより大幅に安価だ。この価格を実現するため、アップルは主要なスペックを抑え、既存部品や旧式デザインを再利用して原価を下げつつ、なんとか「iPhoneらしさ」を保ってきた。ところが今年、 アップルはこれまでとは異なる、よりリスクの高いアプローチをとろうとしている。それはブランドにダメージを与えかねない試みだ。次世代iPhone SEは、2025年に登場するiPhone 17 Proや17 Pro Maxの試験台としての役割を担い、2024年発売のiPhone 16の売上を食い合い、さらに今年の技術トレンドとなっている生成AIまで取り込もうとしている。
アップル初の自社製モデムはiPhone SEへ
アップルは2019年、約10億ドル(約1530億円)でインテルのモデム部門を買収して以来、Qualcomm(クアルコム)製モデムから自立することを目指してきた。その成果として、買収から6年後、アップル独自のモデムが初めてiPhone SEに搭載されることになる。
ただし、ここには妥協がある。新しい5G回路はSub-6帯域のみ対応で、超高速通信が可能なミリ波(mmWave)は非対応だ。さらにキャリアアグリゲーション(複数の周波数帯を束ねて通信速度を向上する技術)も、Qualcomm製ハードウェアでは6バンドが利用できるところ、アップル製モデムは4バンドにとどまる。
これはアップルがiPhone SEで冒す最大級のリスクの1つだ。なぜなら、このモデムは初の大量一般向け展開となるからだ。アップルはメインシリーズではなくSEシリーズで新技術を試すという賢明な判断を下している。もし大量出荷後に初めて明らかになる不具合が発生しても、メインとなるiPhoneやiPhone Proは被害を免れる可能性が高い。だが、その代わりにSEラインが打撃を受ける危険性がある。