今四半期の決算は、いわゆる優良銘柄にとって芳しいものではなかった、これまでの株価上昇をけん引してきた企業の低迷は、6年にわたる強気相場への新たな懸念材料となっている。
アップル、ウォルト・ディズニー、電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズは、長い上げ相場のトップランナーだったが、このところ壁にぶちあたっている。6月の終わりまでは、3社とも今年に入ってから2ケタの上げ幅を記録していた。
ところが、決算が発表されると、市場の不満の矛先を向けられた形で売りを浴びせられた。S&P 500がわずかではあるが上昇しているにもかかわらずだ。投資家が弱気局面で利益確定の売りを出したとみる向きもあるが、有力株の下落は相場の広範な調整局面入りと、強気の相場見通しの変動を示す、ひとつのシグナルとなっているのかもしれない。
「今回の相場では、上昇株と下落株との命運が大きく分かれるのが特徴だ」と、米投資銀行エバーコアISIのテクニカル分析のトップ、リッチ・ロスは指摘する。業種間だけでなく業種内でも銘柄によって投資のリターンに著しいばらつきがあるのだ。
大手バイオ製薬のギリアド・サイエンシズは今年22%の値上がりで、S&P 500の1.1%上昇を支えた数少ない優良銘柄の一つだ。その他、フェイスブック(今年度22%の上昇)、グーグル(同26%)、ファイザー(同13%)、VISA(同13%)などが挙げられる。アマゾンは71%上昇、映像配信のネットフリックスは156%と値上がり率トップで、好調を維持している。
ディズニーも先に年間の上昇率が半分に急減するまでは、相場上昇に寄与していた。(スポーツ専門チャンネルESPNを傘下に持つディズニーの株価下落で、映像関連の同業であるケーブルテレビのコムキャスト、21stセンチェリー・フォックス、タイムワーナーなども先週の推移は、S&P 500で最悪だった)
8月7日の米雇用統計発表を前にリッチ・ロスは、来月にも米国が利上げに踏み切る可能性を踏まえながらも、楽観的な見通しを崩さなかった。
「もし、悪材料が出ても市場が平穏なら、それは普通、強気の相場というのだ」とロスは言う。一方でロスは、9月第1月曜日のレイバー・デーまでの期間に特有な市場変動の大きさを引き合いに出しつつ、別の可能性にも言及した。つまり、市場は低成長、商品市場の混乱、中国の問題といった不安定な状況下で、怖くないふりをして「墓場で口笛を吹いている」のではないかと。
これまでも先行き懸念は次第に強まっていたが、直近の下げ相場で、新たな懸念が加わったようだ。大型合併とヘルスケア関連バイオ産業の好調で、今年に入ってS&P 500は13.4%の上昇を記録しており、他の市場の一進一退の相場に比べて際立った結果を残した。しかし6日、ヘルスケア SPDR ETFは2%、iShares NasdaqバイオテクノロジーETFは4%、それぞれ下落した。
優良銘柄の下落に比べると深刻ではないが、最近上場した企業でも、最初の決算発表から市場の厳しい評価を受けた例がみられた。ハンドメイドマーケットのEtsy、フィットネストラッカーのFitbitの株は、市場予想を上回る業績にもかかわらず売られた。8月6日上場のスポーツジムチェーン、Planet FitnessはIPO価格から10%も低い価格で取引され、関係者を驚かせた。ソーラーパネル設置のSunrunは4日の取引開始から35%の急落となった。