しかし、ウイルスだけでは風邪症状を発症することはない。鼻や喉の粘膜など影響が出やすい体組織にウイルスが侵入する前に、免疫系によって撃退できれば、まず症状は出ない。
逆に、免疫系が一時的または恒常的に弱まっている人は、風邪をひきやすくなる。たとえば慢性的にストレスを感じている状態がそれだ。大学生に日々の生活における情動について尋ねたところ、ストレス度が高いほど風邪にかかりやすかった。これは、健康な大学生のストレス度を評価した後に風邪症候群ウイルスにさらし、症状の出かたを調べた研究結果から明らかになっている。
しかし、近年の研究によると、ストレスと風邪の関係性は人種によって異なる可能性がある。
慢性的にストレスを抱えている人は、ストレスの少ない人よりも病気がちだ。実際、社会経済的な困難、家庭内の不和、性差別や人種差別といったストレス要因にさらされていると、病気にかかりやすくなる。
一方で、病気の発生率はさまざまな性格特性によって低下する。普段から機嫌がよい人、自分を肯定し尊重する「自尊感情」が高い人、ありのままの自分を受け入れる「自己受容」の評価が高い人は、あまり風邪をひかない。
少なくともこれまではそう考えられてきた。だが、ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)のキャメロン・ワイリー博士がカリフォルニア大学アーバイン校在籍中に行った研究結果は、定説に疑問を投げかけている。
この研究では他の類似研究と同様に、健康な人を風邪症候群ウイルスにさらして症状を追跡調査している。実験に先立って、参加者には性格や情動に関するさまざまな変数についてのアンケートに回答してもらった。