NASAの元主任歴史学者で、『Astrobiology, Discovery and Societal Impact(宇宙生物学、発見と社会的影響)』と題した著作を執筆したスティーブン・ディックは、デンマークの首都コペンハーゲンでの取材に応じ、人類が暮らしている宇宙のタイプには3つの可能性があると指摘した。
1つ目は人類が物理的宇宙に暮らしている可能性で、ここでは生命は偶然の産物だ。2つ目は生命が広く存在している生物的宇宙。そして3つ目は、生物学的生命の大半あるいは一部がAIに移行したポスト生物的宇宙だと、ディックは説明する。宇宙は、少なくとも部分的にはポスト生物的である可能性が最も高いと見ているという。
ポスト生物的な世界では、人類のような炭素ベースの知的生命体は高度なAI文明に取って代わられ、映画『マトリックス』のような仮想現実が形成されているだろう。
だが、将来的に人類が地球に設置されたAIに取って代わられるのは、必然的な結果なのだろうか。
ディックによると、ポスト生物的知性体は、地球上などにある既成のものではない。ポスト生物的宇宙の存在は、地球外の知性体に見込まれる年齢によるところが大きいという。
宇宙の年齢は、時間的枠組みが少なくとも137億年にわたる。最初の太陽型恒星は約120億年前には存在していたと思われるため、真に長寿な種類の知性体は誕生から数十億年を経ているかもしれない。従って、ポスト生物的AIは、想像をはるかに超えたものである可能性が高い。
そのため、宇宙に存在するAIの探索に成功するには、地球外生命を探す場合に必要とされる種類の探索方法とはまったく異なる探査戦略を講じる必要があるかもしれない。実際にこれが、地球外知的生命体をいまだに検出できていない理由の1つである可能性がある。
地球外知性体が、ある種の直線的で段階的な進化を遂げてきたとすると、こうしたAIが不老不死で、かつ指数関数的に学習・向上する能力を持つことは間違いないだろう。
ディックは学術誌International Journal of Astrobiologyに掲載された2003年の論文で、人類とは異なり、高度に発達したAIの知性は蓄積されると指摘している。つまり、親マシンの総知識量が次世代に受け継がれるわけだ。