アイアトン氏の「直訳スタイル」は進化している?
2024年3月20日に韓国で行われた開幕戦をテレビで見てから、筆者も一ファンとして、動画配信などを通じ毎日のように大谷選手の活躍、そしてドジャースの戦いを観てきた。この夏、アメリカに住むアメリカ人の親戚が訪ねてきた際、「野球は全く興味がなかったが、大谷選手のニュースは毎日フォローしている」と話してくれた。このことは、大谷選手の影響が日本のみならずアメリカ現地でも大きいことを証明しているようだった。
そのような大谷選手の通訳を担当しているアイアトン氏、そして前通訳者の水原一平氏の通訳のスタイルの違いについて以前記事を書かせていただいた(「大谷翔平『新通訳アイアトン』、水原一平と訳し方の差くっきり。実例で分析」、「大谷翔平新通訳、水原一平とは全然別の訳し方。違いは『行間』」)。
これらの記事では、アイアトン氏の通訳は「直訳スタイル」であり、その評価の一つである「丁寧だが、(アメリカ人として聞いていると)1個1個がつながっていない」という視点について触れた。そして筆者が国際ビジネスの現場で、このコメントの通りのこと(つながっていない)を常に感じ、その修正を行わない時はないことを述べた。その上で、なぜこのような違和感を生じさせているかを日本語と英語の間で生じる「空気を読む・読まない」というコミュニケーションスタイルの違いから解説した。
一方で前任の水原一平氏の通訳は「意訳スタイル」であると紹介した。このスタイルは日本語と英語の行間の調整を瞬時に行いながら通訳を行うものだった。方法としては、コメント内容の順番を入れ替える(主張と本論の順番を入れ替える)ことに始まり、話の要点を捉えつつ、必要であれば単語を入れ替え、時には肉付けし、不要であれば割愛することを総合的に通訳に取り入れている、と紹介した。
この水原一平式通訳は、一方で、行間を読み間違うリスクがあるほか、英語の行間を尊重するため「文字通りちゃんと訳していない」印象を与えることがあるため、通訳者と、通訳のサービスを利用するクライアントとの信頼関係の障害となるリスクもあることを解説した。
本記事はその続編として、とくにアイアトン氏の通訳のスタイルの変化と、その変化からビジネスパーソンが学べることについて書いていく。