その2:英語の行間でも自然な流れになるようにコメント内容の順番を整える
だがコメント内容の順番を入れ替えたと言っても、アイアトン氏の通訳スタイルは「意訳スタイル」にはなっていない。すなわち、「話の要点を捉えつつ、必要であれば単語を入れ替え、時には肉付けし、不要であれば割愛する」ようなことはしていないのだ。アイアトン氏の通訳は現在も「直訳スタイル」に基づいている。アイアトン氏の通訳の丁寧さを感じさせるインタビューを見ていこう。
例に挙げるのは、シャンパンファイト後のインタビューだ。この中では、日本代表として優勝したWBCと今回(言うなれば)ロサンゼルスを代表して勝ち取った優勝とでは、感情や興奮の質にどのような違いがあるか、という問いがされた。
大谷選手は、チーム構成という視点から答えた。すなわち、WBCはその戦いのためだけに一時的に集まった選手たちで勝ち取った優勝だったのに対し、ドジャースでは、シーズンを通して戦ったチームメンバー、そしてファンと一緒に分かち合えた喜びがあるとし、その違いを述べていた。
アイアトン氏はこの大谷選手のコメントを、要約や割愛などせずに、一つ一つ丁寧に訳していた。しかし一方で、英語の行間に整えることも忘れず、大谷選手の結論だった「(WBCとドジャースの優勝においては)違う喜びがあったなとは思います」というコメントを、通訳の際には順番を入れ替えて、一番初めに「主張」としてと訳していた。
「It's a really different kind of happiness that I feel with the WBC(WBCで感じる幸せは(ドジャースで感じる幸せとは)違う種類のものです)」
インタビュアーにも、大谷選手が質問にしっかりと答えていることが伝わる、「英語らしい語順の回答」という印象になった。
参考動画:https://youtu.be/OkfKZYeTbKM?si=ezYsMYCpJbW1Cu9-