ネトフリの「白と黒のスプーン~料理階級戦争~」ヒットでわかった日本の漫画の影響

kazuma seki / Getty Images

こんなバラエティに富んだシェフたちを審査するのはいったい誰なのか。レベルの低い人に審査されるのでは、シェフたちも黙っていないはずだった。
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そんなわけで、番組での審査員は2人だけだが、誰をも唸らせる人が起用されている。

一方は、料理人でありながら、手広く飲食関連事業をしているペク・ジョンウォン氏。テレビにも多数出演しており、彼が開設したYouTubeは、開設するやいなやチャンネル登録者数がすぐに伸び、銀の盾(10万人達成)と金の盾(100万人達成)を同時にもらったほどで、現在は655万人の登録者数を誇っている。庶民的な味わいの店舗を多数運営していて、彼が推した店は必ず流行り、彼の舌に関しては信頼する人が多い。

もう一方は、韓国で唯一の3ツ星レストラン(現在は休業中だが再オープン予定)を経営するオーナーシェフ、アン・ソンジェ氏。ミシュランの3ツ星といえば、誰もが一目置くわけで、それも韓国では唯一なのだから、それ以上何もいうことはない。
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この番組が配信されるとたちまち韓国のみならず、海外でも話題となった。料理人たちのリアルなしぐさ、そして審査員たちの物言いなどが特徴的で、それを真似る芸人も多数現れたほどだ。

幼少期に移民したアメリカ育ちの韓国人であるアン・ソンジェ氏のちょっとアメリカ風な発音で「私は野菜の茹で加減がイーブン(Even=均等な)なのかを大事にしています」というフレーズは、さまざまな場面でギャグにもなっている。

すべてに関してストイックで洗練されたアン・ソンジェ氏に比べ、下町のおじさん風のペク・ジョンウォン氏が対比をなしていて、魅力的なキャラを発揮している。

それだけでなく、番組に出ていた料理を見よう見まねでつくる人たちも多く、ネットでも投稿されている。

料理人になるきっかけは日本の漫画

さて、そんな大ヒット番組の影響で、番組に出演していた人たちの店は大繁盛している。

白の料理人のほとんどが、出演した理由として「最近、飲食業界が大変困難な状況なので、この番組を通じて活気を取り戻したい」と答えていただけに、狙い通りになった。そして皮肉にも白の料理人の店より、黒の料理人の店のほうがより繁盛していて、早朝から行列する店もちらほら見える。

また、番組に出て有名になった料理人は、CMや雑誌の撮影など、本業以外でも活躍している。

筆者が面白いと感じた部分は、料理人たちのなかでの料理するきっかけが、日本の漫画だったことだ。最初から、ニックネームを「漫画から出て来た男」としていた料理人は、もともとマンガ喫茶を経営していたが、そこで「中華一番」という漫画に出ていた料理を提供したのが大ヒットし、いまにいたるという人物だった。

彼が一番インスピレーションを受けたのは「鉄鍋のジャン」だという。実際、最初に出した料理は韓国での翻訳本の「美味しんぼ」2巻の25頁の東坡肉(トンポーロー)と「鉄鍋のジャン」8巻に出ている「カニ肉春巻き」だった。

その他にも「将太の寿司」や「美味しんぼ」など韓国での翻訳本を読んで料理に興味を持ったという料理人もいた。

彼らの年齢は、30代から40代、小さかった頃は確かに韓国でJ-POPや日本の漫画が流行していた。いまは、反対にK-POPや韓国のドラマが日本でも流行っている。番組の配信は終わったが、しばらく料理に関する人々の興味は続きそうである。

文=アン・ヨンヒ

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