ハワイのマウナケアの山頂にある国立天文台のすばる望遠鏡は、2020年からNASAの太陽系外縁天体探査衛星ニューホライズンとのカイパーベルト天体の共同観測を行っている。カイパーベルトとは、海王星の軌道の外側で、太陽から約30〜55auの黄道面に小惑星や氷などがリング状に密集している領域のことだ。
すばる望遠鏡には、暗い天体を撮影できる超広視野の巨大なデジタルカメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム:HSC)が備えられている。ただ、これを使っても地上からでは遠くの天体は太陽の光を反射して見えるごく狭い角度の範囲しか観測できない。そこで、それらの天体の間近を飛行するニューホライズンが活躍する。ニューホライズンからなら、さまざまな角度から天体を観測でき、その表面状態の推定も可能になった。この協力関係により、2023年までに239個のカイパーベルト天体が発見されている。
今回の発見には、千葉工業大学惑星探査研究センターの研究チームも予期しなかったものがあった。ひとつは、55〜70auの範囲に、これまで報告例がない天体が少ない「谷間」があること、もうひとつは70〜90auのあたりに11個の天体群の存在が示されたことだ。研究チームの吉田二美博士は、これが確かなら、太陽系が形成される前の原始太陽系星雲は、これまで知られていたよりもはるかに大きかったことになり、大発見だと述べている。
2006年に打ち上げられたニューホライズンは、およそ18年間飛行し、現在は太陽から60auのあたりにいる。ちなみに、地球から行くのに8カ月もかかるとされている火星は1.52au。海王星までが約30auなので、どれだけ遠いのか想像もつかない。ニューホライズンは今後も飛行を続け、すばる望遠鏡との共同研究は続行される。「カイパーベルトの先に何を発見するのか、研究チームは楽しみにしています」ということだ。
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