これらの展開はすべて、システムインテグレーター(SI)業界に大きなチャンスをもたらすものだ。SIは、前述した概念実証を構築し、エンタープライズ向けチップ設計および製造のネットワークに関して、AIの構築を支援する存在だ。このネットワークには、エヌビディア、AMD、シノプシス、TSMC、アーム・ホールディングス、インテルなどが含まれる。
ネットワーク1(n1)層は、インフラ構築の段階を指し、具体的には、デル、レノボ、スーパーマイクロ、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、オラクルなどの企業やサービスが含まれる。
ネットワーク2(n2)層は、AIが、エンタープライズ向けソフトウェアや、SaaS+エッジデバイスに広がった段階を指す。セールスフォース、マイクロソフトのアプリ、パランティア・テクノロジーズ、SAP、オラクル、サービスナウ、IBM、HP、デル、サムスン電子、アップルなどがここに属する。
そしてネットワーク3(n3)層は、さまざまな業界への受け入れや導入が進んだ段階だ。この段階に至ると、金融サービスや製造業、医療などにAIが普及していく。
要するに、AIとそれに対する巨額の投資は、大半の投資家やトレーダーが考えている次元を超えた、まったく異なる展望のもとに実施されているということだ。
企業は、すでに何年も前から、AIから価値を引き出してきた。その上で、生成AIは需要を加速させ、データ量を増加させると共に、大企業に対しては、競争力維持のためにAIの導入を加速せよという圧力を高める効果をもたらしている。
だが、AIシステムの構築は、経費が高く、データ資産管理も煩雑なため、この2点が、大半の企業にとって大きな壁として立ちはだかっている。一方、テック業界は、AI関連機能は段階を追って高度化する性質を持つことを強調する必要がある。顧客や消費者は、AI関連機能に金を払う意思は持っている。特に無料の(多くの場合オープンソースの)選択肢がある場合は、使おうとする傾向が顕著だ。
AIを取り巻く状況は、バブルとは言えない。だが、「大きな勝利」がそれほど多くは発生していないのも、また事実だ。つまりそれは、アナリストや投資家が、データセンター周辺の需要を超えた経済的なインパクトを完全に認識できるほどの勝利のことだ。
筆者は、今後1年半のあいだに、こうした状況は変わっていくと見ている。それは長すぎると感じる人もいるだろうが、短期的には、続々と達成される「小さな勝利」で満足するしかないだろう。あるいは見方を変えて、AIの導入に関しては、最初は遅々として進まないものの、その後(ほぼ)一瞬のうちに広まる、と考えるのも良いだろう。
(forbes.com 原文)