筆者は毎年、同団体のレビューを取り上げた一連の記事を寄稿している。2024年はこれまで、全般的な注目ポイント以外に、以下の3つのテーマについて考察した。
・二酸化炭素排出量の世界的な動向
・原油の生産と消費を巡る世界的な動向
・天然ガスの生産と消費を巡る世界的な動向
今回は、石炭の生産と消費を巡る世界的な動向を取り上げる。
概要
世界の石炭生産量は2023年、過去最高となる179エクサジュール(10の18乗ジュール、EJ)に達し、前年に記録した最高値を上回った。世界全体の生産量の80%近くを占めたのは、アジア太平洋(APAC)地域だ。その主な牽引力となったのはオーストラリア、中国、インド、インドネシアで、この4カ国合計が、同地域生産量の97%を占めている。
注目すべきは、中国だけで全世界の石炭生産量の半分強を占めていることだ。一方、北米、南米、中米、欧州、独立国家共同体(旧ソ連を構成していた15共和国のうち、バルト3国とジョージア、ウクライナを除いた10カ国による国家連合))における石炭生産量は、2022年比で減少した。
また、世界の石炭消費量も過去最高となり、初めて164EJを突破した。2022年比1.6%という増加率は、過去10年平均の7倍だ。
世界最大の石炭消費国は引き続き中国で、全世界の石炭消費量に占めるその割合は56%に上る。中国の石炭消費量は、2023年に4.7%増加した。過去10年平均が1.1%だったので、2023年はその4倍以上の増加率となったわけだ。
インドの石炭消費量は、2023年に初めて、欧州と北米の合計消費量を上回った。一方、欧州と北米の両地域における石炭消費量は10EJを下回り、1965年以来の最低水準となった。
なお、石炭価格は2022年の史上最高値から大幅に下がり、平均で46%下落した。欧州の受け渡し価格は1トン当たりおよそ130ドルで、アジアの受け渡し価格は1トン当たり平均125ドル前後となった。