「桃太郎型」訴求法でゴールに到達
これは優れた経営者たちに共通した能力であり、それを私は「桃太郎型」と呼んでいる。事業に必要な項目を細分化していき、そこに必要な「ヒト、モノ、カネ、情報」を集めることができる。桃太郎が鬼ヶ島に退治に行くために、リクルーティングで仲間を集めて、KPIを定めながら鬼退治というゴールに到達するのに似ている。
優れた仲間を集める秘訣は、リーダーが「何に燃える人なのか」を見せることだ。これが見えれば、距離に関係なく、ふさわしい人は集まってくる。岡田氏の「燃える原動力」とは、「問題解決」なのだろう。
彼は「尊敬する経営者は小林一三」と言ったことがある。阪急阪神東宝グループの創業者だ。赤字鉄道の沿線で宅地開発を行い、ターミナルに百貨店をつくり、宝塚歌劇団や野球といった娯楽を提供して、人々が生活する社会基盤をつくった。日本の鉄道開発モデルの父だ。
小林一三はよくこう口にしていたという。
「損得勘定ばかりするような人間は、成功なんかしない。人間の宝はカネではなくて、事業なんだ。事業は人を育てることから始まる」
「宇宙の桃太郎」が各国政府を動かしている。これだけでも、日本人として画期的なことではないだろうか。
藤吉雅春(ふじよし・まさはる)◎1968年佐賀県生まれ。『Forbes JAPAN』の取締役兼編集長。2019年3月より現職。著書『福井モデル - 未来は地方から始まる』(文春文庫)は、2015年、新潮ドキュメント賞最終候補作になった。2016年には韓国語版が発売され、韓国オーマイニュースの書評委員が選ぶ「2016年の本」で第1位に。2017年、韓国出版文化振興院が大学生に推薦する20冊に選ばれた。他にも一般財団法人日本再建イニシアティブ(現:一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ)による共著に『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本最悪のシナリオ 9つの死角』(新潮社)や、『ビジネス大変身!』(文藝春秋)などがある。
「編集長取材録」過去記事はこちら>>人はメルカリ登場をなぜ喜んだか? 編集長取材録#1 (2015)