ナイキの行方を占う6つのポイント
再建計画:ナイキの2024年度における収益成長率は1%未満だった。この収益低迷のためか、経営陣は複数年に渡る20億ドル(約2986億円)のコスト削減計画を発表した。この計画には、経費削減の一環として、特定の不採算製品ラインからの撤退や数百人規模の人員削減が含まれる。ナイキは、合理化によって同社が抱える多くのブランドの売上低迷から立ち直る過渡期にあり、同社の見通しでは2025年度の年間収益は減少し、特に第1四半期には10%の減少が見込まれている。成長する稼ぐ力:ナイキの収益は期待されたほど伸びていないが、同社の利益を稼ぐ力は依然として高く(これによって株主にキャッシュを還元できる)、これまでに築き上げたブランド力により高い競争優位性を保っている。2024年度のEPSは前年度比15%増の3.73ドルだった。
利益率の改善:ナイキの利益率は、その成熟したビジネスの性質上、長い間狭い範囲にとどまっていた。しかし、2024年度の売上総利益率は1.1ポイント改善し、44.6%となった。物流コストの低下や一部の高価格帯製品の貢献による販売価格の上昇などがこれを牽引した。同社は、こうした追い風が2025年度の売上総利益率を0.1から0.3ポイント押し上げると予想している。言い換えれば、ナイキは依然として高い価格決定力を持っており、長期的には利益率の高い高価格帯の製品を販売することで、プロモーションなどによって利益率が低くなった製品販売によるマイナスをある程度相殺することができる。なお、ナイキのライバルであるルルレモンの売上総利益率は58%(2024年12月期)である。
在庫の解消:2024年度の棚卸資産(在庫)は前年度比11%減の75億ドル(約1兆1187億円)で、棚卸資産回転日数も改善した。在庫が解消されるということは、同社が新たな製品を投入しやすくなることを意味する。
自社株買い:今後の株価上昇は、同社による自社株買いと配当からももたらされる可能性がある。過去5年間における同社の自社株買いによりEPSは40%近く押し上げられただけでなく、配当も約70%増えている。
強力なバランスシート:同社は年間510億ドル(約7兆6100億円)以上の収益と、60億ドル(約8953億円)以上のフリーキャッシュフローを生み出している。このキャッシュフローにより、同社は115億ドル(約1兆7160億円)以上の現金を持ちながら、競合他社よりも多くのプロモーションを行うことが可能だ。さらに、ナイキの負債はEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)のわずか1.3倍であり、不測の事態が発生しても財務的に安全性は高いと言える。
(forbes.com原文)